第45回講演(2/6ページ)
地球は太陽から光を受けていて、受けている側は昼で、反対側は夜となりますが、熱を受けている側はどんどん温まっていきます。温まっていくだけであると、地球の温度が上がっていくはずですが、地球は一定の温度を保っています。その背景には、地球は宇宙空間にどんどん熱を逃がしているということがあります。これをエネルギーフローと呼んでいます。問題はこの出ていくエネルギーが遮られてしまうと地球が温暖化するというところにあります。最近のCO2の増加によって、地球が温暖化するのは必至といわれる理由です。
空間に放出されるエネルギーは、黒体放射といわれ、表面温度によって放出されるエネルギーとしての電磁波の波長が決まっていますが、太陽の場合、表面温度はおよそ6,000度くらいですので、それに対応する波長の分布をもったエネルギー、すなわち紫外線から、可視光、赤外線までの広い波長帯で入ってきて地球の表面に到達することになります。ところが、地球表面から宇宙へ逃げていく場合の波長帯はほとんど赤外線領域で、その多くは大気に吸収されてしまいます。しかし、わずかに吸収しない波長帯があり、これがいわゆる「大気の窓」といわれているところです。吸収はほとんどが水蒸気によるもので、こうした吸収によって、本来であれば−18℃になる平均気温が、実は+15℃、その差の33℃分、水蒸気が地球を暖めてくれているということになります。
CO2の影響はどうかというと、吸収帯の端のほうに少しあります。またメタン、フロンになりますと、大気の窓の中に吸収帯を持っているので、温暖化係数が数10倍になるといわれているわけです。
現在、世界各国でそれに対して反論する学者がでてきています。日本では2005年6月26日に「温暖化、太陽が強く影響か」という新聞記事が出ました。この記事には、「20世紀のはじめから2000年までの太陽活動の変化と地球の気温上昇の見事な一致」と書いてあるのですが、太陽磁場の乱れと地球の気温の変化が見事に一致しているのではないかということなのです。
太陽からのエネルギーというのは非常に安定しており、変化が直接影響を与えるというよりも、磁場の乱れなどを通して増幅された影響が出る可能性があります。このように、地球温暖化は必ずしもCO2の増加に起因してはいないという考えが一部の見方にあります。マスコミでは「CO2の放出量が増えていくと地球が温暖化して危ない」ということがよく叫ばれていますが、本当にそのとおりなのかということなのです。
我々は、そのあたりを「常に疑ってかかる」という目ももっていなければいけないと思います。一番重要なことは、このような変化が起きたとしても、もちろん地球は温暖化しているのかもしれません、あるいはそうでないかもしれませんけれども、大きな変化があったときに、それから派生してどういう現象が生じるのか、その変化に対して柔軟な対応を常にできる準備をしておくことが大切だということになります。
CO2が増えていくと地球は温暖化していくということですが、それ以外に次のような問題もあります。最近ようやくニュースなどで扱われてきていますが、多くのCO2は海水に溶け込んでいきます。その結果、海水が酸性化していきます。北大西洋での実測値およびモデル計算した結果をみると、化石燃料の消費がこのまま増加していくと2100年にはCO2の濃度は750ppmになり、海水のpHは8を切って7.8位になることが予想されています。地球の歴史を振り返ってみると、海底の堆積物などの調査から、生命が誕生して以来、生物は、海水のpHが8を切った環境を経験したことがないと考えられています。その結果、海洋の酸性化によって、海水中のプランクトンをはじめ、生態系のバランスに大きな変化が出ることが予想されます。CO2の増加は、単純に地球が温暖化していくだけではなく、生態系にも直接的な影響を与えることが予想されます。どのような変化が起きうるのか、今後の研究が必要ですが、変化が生じた時に変化の幅が多少大きくても、我々は常にそれに対応していけるだけの準備をしておかなければいけないということになります。
その初めの対応として、我々はもっと、温暖化やCO2の問題について、エネルギーの問題がいちばん絡んでいるということを考える必要があります。
第45回講演(3ページへつづく)
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