第44回講演(4/7ページ)
<心筋梗塞と不安定狭心症との決定的な違い>
こちら(心筋梗塞)は突然死が非常に高度に起こる、こちら(狭心症)は、突然死はまず起こらない。
古い概念は、両方とも一緒でした。
急性心筋梗塞も、不安定狭心症も、狭心症も、結局は詰まってしまって、最後はだめになっていまうという考えだったんですが。
最近の考え方は、狭心症はコレステロールが段々溜まって、しかしここの膜は強固だから中々破れないということで、最終的には狭くなっていくが、中に風船を入れて膨らませば、治療可能なんだという考え方です。
同じコレステロールが溜まるんですが、ここの膜が問題で、この膜がストレス、炎症、タバコ、怒鳴ったり怒ったりしているということになると、ここに炎症が起こりやすくなって、炎症細胞が浸潤する(スライド)。
炎症細胞が浸潤しますとここの膜に比べて弱くなる。
ここが何かの加減で一部でも少し弱くなると、中のコレステロールがドロドロと出てくる。
人間は異物が出ると塞ぐ。
こういうときは塞いでほしくないが、血小板が出てきて、血の塊ができてここを塞いでしまいます。
どんどん塞いでしまって、塞いでしまっても少しでも空いていればそれは狭心症、不安定狭心症。
しっかり閉じてしまえば心筋梗塞なんです。
ですから、心筋梗塞を起こさないようにすることが大事です。
狭心症はいつでも治療できます。
心筋梗塞は瞬間を争うこと。
突然起こりますから、それがどういうときに起こるかわかりませんから、ストレスが強い時期とか、始まった時期は起こりらないで、5日から1週間してこのようなことが起こる。
ストレスが多い時期は、やけ酒など飲まずに早く帰って、ゆっくり休んでよく寝ることが大事です。
<狭心症>
動脈硬化とは動脈の内側にコレステロールなどがたまって血管壁が厚くなり、弾力性がなくなってもろく傷つきやすくなる状態。
狭心症の症状は、冠動脈の中が動脈硬化のために狭くなり、心筋に血液が十分に送られないため下の心筋が虚血に陥ってしまうことである。
これはすぐには突然死の原因とはならない。
<急性心筋梗塞>
動脈内にできたプラークが破たんすると、その破たん部に血栓ができやすくなります。
心筋梗塞は、冠動脈が血栓により完全に詰まった状態になることにより起こる。
今はこれを防ぐためにアスピリンを飲んだりする。
血圧が高くなければ、65歳を過ぎたらアスピリンを飲んでおくと、脳梗塞や心筋梗塞を防ぐかもしれません。
そういう大規模なデータはないのですけれども。
ただし、血圧が高いと逆に出血したときにどんどん出てしまいますから、血圧が高い人にはすぐに使いたくありません。
この方は、50代の男性でしたが、ときどきこういった危険な不整脈(スライド)が出るんですね。
不整脈というのは非常に臨床的な意味が広く、突然死の可能性が高い不整脈、まったく放置しても問題ない不整脈がある。
幅がものすごく広い。
その見分け方が一番大事です。
私たちがもしこれを見たら、これは危ないと思うわけです。
顔かたちが同じでも、危なくない不整脈がたくさんあるが、その見極めが大事です。
この方は、「胸がいたい」と言っていらっしゃって、胸が痛いというときは狭心症、あるいは不整脈を見つけるために24時間の心電図をとります。
24時間の心電図を見ましたら、夜中の0時26分にこのような不整脈(スライド)がでた。
1日にせいぜい7個くらいしかなかった。
そして、1時45分には、少し早くなってきたと思ったら、突然心室頻拍、致死性の不整脈が起こって、5分後には心室細動で心停止。
日本人にしろ、外人にしろ、突然死を起こす方の7割から8割はこのような亡くなり方をする。
ほとんどは冠動脈硬化にもとづくものが多い。
中年で亡くなる方の突然死は、こういう亡くなり方をする。
今ですと、これが予測されれば、冠動脈にステントを入れたり、あるいはICDという植え込み型の除細動器を入れて、まさかのときにこれが起こったら、自動的に元に戻すという方法があります。
当時はそういうものがなかったんです。
今は不整脈死のことをですが、これは逆に心臓の機能が悪くてなくなった例です(スライド)。
悪い心臓の動きはほとんど動いていない(ビデオ)。
この方は心不全で亡くなったのですが、亡くなる時には先ほどのようにばたっといって亡くなるか、このようにジワジワ、ジワジワ心機能が低下して亡くなるかです。
今は両方とも良くすることが可能です。
先ほどの方のような場合には植え込み型除細動器を入れてまさかのときに、例えば意識がなくなってから7秒後に自動で電気ショックをやって元に戻る。
このように心機能低下で動かなくなってしまった場合には電気的なカテーテルを2つここと、ここに入れて(スライド)同時に刺激すると収縮が良くなり血液が出て行くようになる。
患者さんが、今までほぼ寝たきりだった方が、少なくても平地くらいは歩けるようになる。
そういうことがあります。
第44回講演(5ページへつづく)
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