第44回講演(3/7ページ)
<動脈硬化>
動脈硬化は全身の血管病です。
冠動脈だけにくるとは限りません。
脳の血管にも、足の血管にもいろいろなところにきます。
しかし、概して決まっていますのはこのような過程です(スライド)。
まず、はじめはきれいです。
非常にきれいです。
コレステロールが溜まってきます。
主にコレステロールです。
そこに炎症反応を起こして段々、段々、何十年も経って狭くなっていきます。
今の私たちの年代だと30歳から始まると言われていたんです。
今の方は恐らく高校生くらい、大学生くらいになっても始まっている可能性があります。
コレステロールが高いですから。
アメリカの同年代よりも高いですから。
アメリカの高校生と日本の高校生と測ると日本の高校生のほうが高いんです。
これからもこのような病気が増えていくと思います。
これがついに内腔が狭くなって、このようになると、坂を上ると冷や汗が出て、狭心症が起こってきます。
これが詰まってしまうということとは少し違います。
これはジワジワ、ジワジワきて、狭心症が起こること、安定の狭心症なんです。
ですから、これは突然死することは以外にない。
だから、こういう動脈硬化を基盤として、破けると心筋梗塞を起こしてします。
動脈硬化の基盤となるリスクは、コレステロールが高いこと、中でも悪玉コレステロールが高いことです。
コレステロールには善玉コレステロールと悪玉コレステロールがある。
正常では大体コレステロールは全部を含めても220くらいです。
しかし、例えば、230の人が善玉コレステロールが110あるひとは全く治療の必要はないのです。
最近は悪玉コレステロールだけです。
一般には悪玉コレステロールが140超えた人はリスクが高くなります。
あとは、タバコを吸う、これは癌のことと心臓のことと両方ともきます。
これはリスクの大きなものです。
大体40歳以下で心筋梗塞になる方はほとんど全員がタバコを吸っています。
以前、39歳くらいの方がちょうど1日100本くらい吸っていたんですよ。
当時はまだ医療も発達していませんでした。
冠動脈造影をしたら、本当にズタズタと言ってよいほど細くなっているんです。
その方はほとんど突然死するであろうと思っていましたら、やはり奥様とけんかしてその直後に後ろに倒れて亡くなってしまいました。
そのようにタバコは本数が多ければ悪い、若ければ、若くはじめればはじめるだけ悪いです。
ぜひやめてほしいと思います。
それから血圧が高い。
そのほかのリスクは糖尿病とか、中性脂肪とか、これもリスクなんです。
それから肥満、これが以外に短期的なリスクなんです。
例えば、几帳面な方がいらっしゃいますね。
几帳面な方はこの病気にはよくないんです。
横になっていたらまっすぐに直してみたり、イスが出ていれば直してみたり、気に入らないことがあると怒ってみたり、そういうのが動脈硬化と結びついてしまいます。
ある面ではずぼらの方がよい。
ところが、社会は、そういうのをA型行動様式といいますが、そういう方のほうが世の中では貴重で、大事なんです。
行動様式にはA型、B型があります。
B型の人は「今日は5時になったから、まだこれだけ残っているけれど明日でいいや」というが、A型は「どうしも今日中にやってしまう」「徹夜してでもやってしまう」となります。
A型の人のほうが動脈硬化が起こりやすい。
あとは、尿酸が高い。
(スライド)この「M」と書きましたのは、メタボリックシンドロームということが最近注目されていますが、コレステロール、タバコの次にメタボリックシンドロームに属する人は動脈硬化になりやすいようです。
メタボリックシンドロームの人はこの4つ(高血圧、糖尿病、高中性脂肪、肥満)が基準ですけれども、これらを複合的にもっているということが特徴です。
一つということはありません。
大体30歳くらいから肥満がでてきて、中性脂肪が高くなって、良いコレステロールが下がってくる、そのうちに血圧が上がってくる、そして糖が出てくる。
同じ人がこのように複合的に持っている、そういう人が結局リスクが高いということからメタボリックシンドロームといわれています。
こういうのは単独で悪いんです。
臨床的には心筋梗塞と狭心症という言葉がありますが、その差は以下のとおりです。
狭心症というのは心筋が、例えば坂を上っていくと途中で胸が締め付けられると血液が行かないことから心筋虚血といいます。
そのまま無理して歩いて行くと不整脈が起こる、そしてそこで休んでしまえば数分後にはほとんどが元に戻ってしまう。
それが狭心症です。
ところが、そういうのを何回も、何回もやっていますと(心筋虚血)、いずれはまだらになっていき、病的心筋になっていく。
そうなってくると心臓の機能が弱くなって、収縮が悪くなる。
心筋梗塞というのは完全に血管の中が急性に詰まってしまって、壊死を起こしてしまうことです。
死滅してもとに戻りらないというのが心筋梗塞です。
狭心症が起こっているときには不整脈死することがある。
心筋梗塞の時には心筋梗塞の後でも不整脈死することがある。
今は非常に薬がよくなっていて、専門医にかかっていれば、一回治療していればまず突然死というのはない。
私が医局に入った当時は、心筋梗塞は入院しても35%は亡くなっていました。
しかし、私が東海大学にお世話になってからは入院したら15%くらい、今はほとんど3%くらいです。
専門施設に救急車で行ってしまえば、ほとんど亡くならない。
その亡くなる3%は、この梗塞巣が広すぎて心臓が動かなくなってしまい、ショックを起こしてしまい、それで亡くなってしまうということです。
あとはほとんど大丈夫です。
ともかく、専門施設へ早く運んでもらう。
幸い、横浜市は医療機関のそういう点は良いんです。
神奈川県の中でも良い。
伊勢原、秦野地区もよい。
神奈川県の医療は1次、2次、3次と分かれていて、はじめから3次に行くことはできない。
まず、1次、開業医の先生、市の医師会の先生がやられている病院、そこでだめだったら2次が私立病院、最後に大学病院となっている。
神奈川県にも4大学ありますが、大学病院によっては、1次は受けないという大学もあります。
東海大学はどこでも受けるというのがモットーだ。
1次であろうが、2次であろうが、3次であろうが、受ける。
以前は少し違ったが、今は充実しているので、これは重症だと思えば、自分では重症がわからないが、おいでいただければ見させていただくということになります。
もちろん救急車はどこからでも結構です。
必ず、断ることは絶対にありません。
ただ、ベッドが満床となっておりまして、今は少し厳しくなっておりますので、見させていただいて「この病院いかがですか?」というのはありますが。
第44回講演(4ページへつづく)
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