第44回講演(2/7ページ)

<冠動脈とは?>

 心臓が正常に働くためには心筋にも十分なエネルギーが必要で、そのための酸素や栄養分を心臓の筋肉に運ぶ血管を冠動脈と呼び、心臓の上から冠のように覆っているという意味からきています。
 冠動脈を大きく分けると、右の冠動脈と左の冠動脈があって、左の冠動脈はその支配が大きいので更に2つに分かれていて、前のほうにいっている血管と横から後ろへ廻っている血管があります。
 治療するときには、冠動脈には3つの血管があって、この何処の部位がどのくらいの程度に異常があって、そこをどのように直せばよいかといつも考えています。
 ですから、この冠動脈の3つの血管がどうなるかということが大事であります。
 最近は私たちの病院に、日本でもいち早く冠動脈が写せるCT、つまり64列といって非常に微細なところがわかるCTを入れていただいている。
 したがって、多くの方が入院をせずに外来で「もうあなたは大丈夫ですよ」と言ってあげることができるようになりました。
 これが冠動脈のCT画像ですが、私たちはこれを撮って患者さんに見せると、「こんなに良く写っているんですか」と言っていただけます。
 この方は52歳の女性で、外科で階段を上って負担をかける検査をしたら異常があったということしたが、心電図は電気の検査なんです。
 本当に冠動脈に異常があるかというと、やはり画像のほうが良くわかるわけです。
外科の先生は心配だから、陽性だから見てほしいということで見ることにしました。
 東海大学の場合は、外科系は手術する前に必ずといっていいほど、私たちに相談があります。
 私たちは心電図等を見ますと更に検査をする必要あるかどうかわかりますけれども、中にはわからないものもあります。
 そういうときは検査を進めて、最近はこの器械がありますから、まずこれをやります。
 この52歳の方は、心電図では異常があって、冠動脈の病気が疑われたけれども、このCTを行ったら非常にきれいなんです。
 これをお見せして、「もう大丈夫ですよ」「もう心配ありませんよ」と言いました。
 このCTは、その方が正常であれば「異常はなく、もう大丈夫です」と言ってあげますが、異常がある場合はどの程度の異常があるかもう少し検査しなくてはいけないのです。
 でも、大多数、つまり私のところに外来が10人来ますと、冠動脈の異常があると先生から言われてきた場合、8人は異常ありません。
 その8人の異常がないことをこのCTは証明してくれるんです。
 今までは私も自信がないと「入院して冠動脈の造影をやってみましょう」と言っていました。
 入院しますとカテーテルを入れて、心臓までもっていって、写すんです。
 私たちは安全だと思っていますが、管を入れるわけですから患者さんのほうは必ずしも安全と思っていません。
 そういう点これは非常に安全にできる検査であります。
 ただ、みなさん胸痛があるとか、ドキドキしておかしいと思ったときにこれをやってもらうと正常であれば心配ない、異常がある場合にはこの例のようになります。
 この方は胸痛で、坂を上ると胸が痛くなるということで来たんですが、胸が痛くなるときはいろいろなときがあるんです。
 40から50歳の奥様方に多いんですが、「最近胸が痛い」「ドキドキする」ということで、「どこですか?」と聞いたときに、その奥様方が指一本で「ここです」という場合は、まず違います。
 まず狭心症ではないですね。
 それから、「ドキドキ」と胸痛がある場合にはまず狭心症ではないですね。
最終的な確定は難しいのですが、ここが痛いんです(胸を指して)といった場合には大丈夫です。
 そういう方の場合、肋間を押してやるんです。
 そういう痛みのほとんどは肋間神経痛なんです。
 ところが、坂を上ったり、階段を上ったりすると、そこまで行くといつも冷や汗が出たり、胸が圧迫されたりする場合には要注意です。
 外来でできますからCTをやりました。
 そうしたら、ちょうどこの、先ほど言いました左の横に行く動脈のこのところに(スライド)狭窄があります。
 正常であったら必ずわかるんですが、このようになりますとどのくらいの狭窄だかわからないんです。
 私たちはこの人が病気だという場合には75%以上狭くないと言わないんです。
 これから75%というのは非常に難しい。
 ここまできますとやはり入院していただいて、このように冠動脈造影をしてもらいます(スライド)。
 そうするとはっきりわかります。
 この人は99%狭窄であるということになります。
 このような場合でも30分でよくなります。
 風船を持っていって、こうして押し広げてしまって、狭くならないようにステントというのを入れますと、30分から40分、遅くても1時間以内には治っている。
 今はそういう時代なのです。
 しかし、それをやらないと突然死という問題が出てくるわけです。
 今、循環器、心臓のところは一番発展した領域です。
 まだまだ、神経内科などありますが、まだまだ研究の段階のものがたくさんありますが、この冠動脈に関しては治療の段階で、どういう治療をしたら良いかといったそういう段階なのです。
 ですから、どうかこれで、なるべく早めに見つけて、早く対応することが大事です。

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