第42回講演(3/4ページ)

 それから、当然生活水準はネットカフェ難民の例でも言ったように、劣悪になる。当然お金がなければどこからかお金を工面してくる。いわゆる多重債務者の増加ということになる。

 それから、行き場所がなければホームレスの増加や最終的には自殺者の増加。そういったかたちで社会的にマイナスの影響を持つということになる。
 同時進行的に地域格差というのは人口の減少が進んでいるわけで、過疎が進行すれば国土は荒廃する。地域格差の問題も深刻だ。

 平成の大合併、はたして本当によかったのか。私は疑問に思っている。よく、一人口では食えないけれども二人口では食えるといって、結婚を勧める人が昔よくいた。ところが地方でよく合併する。財政が苦しいところと財政が苦しいところとが一緒になったら倍苦しいんじゃあないかと。

 地域だって広くなる。その結果、先の郵政改革では確かに自治体にはひとつ郵便局を設置するが、今までであれば、各小さいときの市で郵便局があったから、お年寄りはそこで年金とかなんとか、手続きが出来た。しかし合併してしまったらわざわざ市の中心まで行かなきゃいけない。それを高齢者にやれというのは無理だ。まして銀行はない。
 小泉さんみたいに恵まれたところに住んでいる人はいいが、つまり、地方切捨て、そういうことが例の郵政選挙で実際に行われてしまって、貧しいところは大変だ。
 例えば最低賃金は法律で決めている。青森県は本当に最低賃金だ。時給は確か691円ぐらいだと思う。大都市だと1,000円くらいになるんだが。

 田舎へ行けば行くほどインフラの経費はかかる。水道だって高くつく。それは厳しい条件の下で、少ない賃金で生活をしなければいけくなってきている。つまり、すごく深刻な問題を抱えていることになっている。
 こういった状況を「勝ち組」「負け組」といったかたちで、とくに経済構造はそういった言葉で言い表されている。
しかし、こうした取り残された人たちを何とかしなければいけないのが、僕は政治の使命だと思っている。

 政治の使命は、国民の生命財産を守るということだが、トーマス・ジェファーソンが起草した合衆国独立宣言は、もうひとつ、これにプラス国民の福祉向上、これも政治の仕事だといっている。
 つまり福祉の向上とは、昨日よりも今日のほうが生活のレベルが上がるという、それから今日よりも明日上がるであろうと、そういうふうにもっていかなければいけないことだ。

 でも昨今の状況からみると、今日よりは明日、明日よりは明後日、何となく不安だ。そういった状況に進むと、理念では弱い人たちを何とか救済しなければいけないと思っていても、実際に切実な自分たちの問題としてみれば、さっきいったようにアメリカの住民投票のように露骨な形で出てくる。それはまさにどういう争いかというと、「タックスペイヤー」税金を払っているものと、「タックスイーター」税金を食べているものとの分極化になってくる。
 ところが、投票に行くのは「タックスペイヤー」だ。「タックスイーター」になっている人、例えば今20歳台の人がいろいろな問題を抱えている。これを何とかするためには選挙に行って投票しなければいけないということだが、大都市の20〜25歳の投票率は区部で2割を切る。それでは若者たちは見捨てられる。

 つまり、こういう厳しい状況にあれば、まず自分の利益の保護のことを考えるわけだから、どうしてもそういう人たちは切り捨てられるんではないかということだ。それを踏まえて、じゃあ統一地方選挙ではどうなったかということをみると、第1回目は13知事選挙と44都道府県議会議員選挙が行われたわけだが、知事選では現職が圧倒的に勝った。もちろん、スキャンダルがなければ現職が強いというのは選挙の常道だ。

 それから、知事選挙は一人だけ選ぶ小選挙区制だから、いわゆる自公の共闘が容易に成立をする。当初「そのまんま旋風」が吹き荒れて無党派をどう動かすかということになったが、保守の圧勝になった。
 ところが44都道府県議会議員選挙をみると、民主党が躍進している。前回205であったものが357、自民は前回1,309であったものが1,212と、こういう具合に、県議会議員選挙のレベルでは民主が躍進した。

 県議会議員選挙でも、市議会議員選挙でもそうだが、大選挙区だ。だから政党でという枠の中で考えるよりは個人がどれだけ票を集めるかということで、自公のような共闘は成り立たない。
 つまりそういった意味では自民党は多少足腰が弱くなったかなぁということがいえるかもしれない。だけど、15の指定都市での議員選挙をみると、自民党も増やしている、もちろん民主も増やしているが、これは両方増えている。この数字をどう読んでいいのか、ちょっとわからない。ただ、全体としては民主党が善戦をして将来につなげているのかなという気がする。

 じゃあ、統一地方選挙の第二ラウンドではどうか、補選は1勝1敗、これをどちらの勝ち負けとするかということだが、私はやはり民主党が結果的には負けたんだろうと思う。
 これはひとつには、両方とも民主党がもっていた議席だから、両方勝ってプラスマイナスゼロということになる。
 1勝1敗だが、何で民主党の敗戦かというと、つまり、自公の共闘の結果、沖縄では島尻さんという女性の方が当選した。これは元々、那覇の元民主党の議員だ。つまりそれを繋ぎ止められなかったということだ。

 それから、沖縄と広島と長崎というのは、これは革新の牙城だった。それは先の戦争の結果からそういうことなんで、それを革新共闘で取りこぼすことは、やはりすごい痛手であったろうと。逆にいと、自民党、公明党はそういう基地の問題とかをうまくぼかして、教育だとか、国民生活がどうなるかというような争点を選挙戦で展開した、こういう戦略の違いがある。
 だからといって、全く民主党が沖縄でだめだったかというと、宜野湾市長選挙では民主党を中心とした野党共闘がとっている。こういう具合に、すごくクロスしていて読みにくい。
 仮説で自民党が弱体したかというと、多少は弱体している。つまり、今までの支持層は高齢化したりで地域的なつながりが多少希薄になっている。そこに民主党が入り込んでいるなとの感じはする。
 ただ、民主党の組織化がきちんと進んでいるかというと、まだまだ数字的には足りない面が多くあるということだ。
 これは、有権者が何を求めているのかを選挙が反映していることで、まさにその結果だと思う。ということになれば、次の参議院選挙がどうなるかということだ。

 さてここで、格差の問題を長々としゃべってきたが、格差は争点となりうるかどうか。私はなりえないと思う。
頭の中ではわかっているが、これは何とかしなきゃいけない、大変だと。しかしながら、格差でいわゆる負け組と称されている人は政治的少数派だ。多数派は現状の生活を何とか維持しようと思っている。あるいは、負け組にならないで来た人たち、それは今の成熟した社会の中で、大半の人はそういう人たちだ。
 しかも、高齢者を除いて若い格差で苦しんでいる人たちは絶対に投票に行かないで変えようといったってそれは多分無理だろうなということ。
 それから、安倍さんの開き直りが功を奏している。柳澤さんの「産む機械」問題や松岡さんの事務所経費の光熱費問題。全く影響しなかった。

 これは何でだろ、ということだ。多分、安倍さんが開き直って色々なかたちで国家という意識を高揚するような政策を前面に出してきたことが、わりと受けているのではないか。
その証拠は、16日に民放が行った世論調査にある。TBSが安倍さんの支持率55.1%、すごく高い数字を出している。日本テレビも50%に近い数字を出している。ただ、朝日新聞の17日朝刊では支持率が40%だが、前回の37%よりも3ポイント上がっている。当然支持しないというのは前回の43%から38%と5ポイント違っている。
 だからといって政党支持はどうかというと自民党は0.6ポイント減の38.4%、民主党が増えて3.7ポイント増の18.9%というふうに民放の調査では出ている。ただし、朝日新聞の調査では自民党を支持するというのは30%から31%、1ポイント増えて、支持しないが14%。

 こういうふうにバラバラな調査結果が出ていることはかなり読みにくい状況にあるということだが、多分現状維持を望む保守層がそれは無党派層も含めて政治的多数者を構成している結果ではなかろうかとみるわけだ。
 そうすると参議院選挙はどうなるか、無党派の動きがよくカギをにぎるとか、その風がどっちに吹くかによってどっちが勝つかということになる。
 ご承知のように今年はいのしし年だ。亥年の選挙、これ12年に1度ずつ統一地方選挙と参議院選挙が重なるわけだが、それを辿ってみるとガクッと減っているところが亥年だ。
 これは石川真澄という、もう亡くなったが朝日新聞の論説委員で、彼がその特徴として統一地方選挙でエネルギーを使い果たして参議院選挙には兵隊が動かないと、だから投票率が低くなると分析している。

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