第42回講演(4/4ページ)
投票率が低下した場合何処が有利か、コンスタントに投票に行く層、そういったところが有利。硬いところだと、公明、共産ということになるし、保守層をまとめていれば自民党。もちろん民主でも地域によっては勝てるかもしれないが、自民党が負けるにしても前々からいわれていたほど、大敗はしないだろう。
せいぜい自公合わせて過半数になるかならないかというところで決まってくるのではなかろうか。ただ、選挙予測で福岡さんいっているが、あの人も当たらないように私も当たらない。これは当たるも八卦、当たらぬも八卦、占いのようなものだから、選挙予測をやって当たったためしがない。
出た結果をみて、ああだこうだというのが学者さんだ。まあ、だいたいその程度だと思って聞いていただければと思う。
参議院選挙では組織票をもつ政党が多分有利なんだと。それから、女性票をひきつけるような政策を展開した政党が有利だと。
ここずっと、女性のほうが男性よりも投票率か高い。女性はまた熱心に動いてくれる。屈抜きで動くから。そして、小泉さんみたいなワンフレーズポリティクスが...。
自民党は女性層に受けそうなひとを頭に持ってくる。そこはやはり狡猾なところかなと思う。
選挙で何がかわるかだが、あまり変わりないと私は思う。近未来的に日本の政治経済はこのまま進んでいくだろうと。格差社会に終止符が打たれるかというと、このまま当然続いていくだろうと。
もちろん、将来的には先ほどもいったような状況だから、どこかで転換しなければいけないが、政治マターとしてそういう深刻な問題にすぐになるとは思われない。
ただ、変革があるとすれば高齢者がどういう意識を持つか、それから若者がどういう意識を今後持ってくるかによってガラッと変わってくる。
なぜかというと、高齢者は自分がその引退後の生活をどう設計するか、そのために政治はどうあるべきか、これを真剣に考えるようになると思う。
それから若者が今のおかれている状況についてどう認識するか。ただ、そこを政党がうまく争点を明示して、自民党であれ、民主党であれ捕まえられるかどうか。そういうことにかかるわけだ。
ところが、政党は中々そこまで踏み出していない。どうやって捕まえるか、やはり、協働という概念を出しているが、地道にこれからの社会というのは、地域社会の中で助け合っていく社会が必要だ。
だって、これほど(雇用関係が)切られていくわけですから、昔みたいにお互いに足りないところを補っていくような社会を構成していけないと、まとまりがつかないと私は思う。
そのときの地域リーダーを政党がどういうふうに養成していくか。それが、組織化されて、政党と直結すれば、そういった戦略をとれれば、政党は伸びてくるじゃあないかと。
つまりグラスルート活動が重要になってくるんではなかろうか。だから地道にそういうことをしなければいけない。
とくにNPOをどういうふうに取り込んでいくか。地縁、血縁だ。旧来の地域の構造から私たちは知の縁といっているが、知識、そういった色々なかたちの専門性の横のネットワークの中で組織化していくという、新しいかたちでやっていけば、そこの政党は伸びるのではないかと思う。
【質 疑】
Q:投票行動についてだが。統一地方選でもそうだったが、何故日本という国はこれだけ格差社会でありながら(格差社会には色々定義があるのでそこまでいえるかわからないが)皆さんが投票に行かないのか。もし山内先生だったらどういうかたちで投票を促していくのか?投票を促すことによって、この自民政権が民主政権になりうるのか?
A:何故投票に行かないのか。戦後すぐの時の投票率というのは、例えば、地方選挙では90%超えていることが当たり前だった。今は50%台、これが参議院選挙だと、選挙区選挙、昔の地方区だ。そうなると30%台なんてのが出てくるようになっている。
我々の分析では現状に満足している人は投票に行かない。もうひとつは自分の1票はたいして役に立たない。どうせ変わらない、だったら行ってもしょうがないかなと。
それから豊かな社会になると日曜日投票だ。そうなるとディズニーランドへ行こうかなとか、デパートへ行こうかなとか。
天気が悪ければ行くかというと、雨が降るとまた投票率が下がるという悪循環。
それから最大の要因は政治不信。これは調査をすると、アメリカとかイギリスは「自分の1票で政治が変わるか」という質問に対して、変わると答える人が圧倒的に多い。
日本は変わらない。その理由というのは、政治家は信用できない。そういう答えだが、これを何とか払拭しなければいけないし、授業中投票に行けと盛んにいうんが、大体行ったことはない。ただし行く場合がある。
例えば、私は政治学言論を教えているが、20歳以上の学生さんに、誰に投票したかは書かなくていいけれども何処の投票所で投票したか書いてくれたら、平常点5点やるぞと。そうすると結構書いてくる。何でだろう?つまり、その程度かなと思う。
よく冗談でいうんだが、行けといっても中々行かない、だけど行かないと政治は変わらない。僕は選管の人たちにいうんだが、ティッシュなんか配ったって、風船なんか置いてあったってだめだって。だから地域に住んでいる人の色紙でもタダで書いてもらって、投票にきたらお土産に持たせてあげようかと冗談でいうんだけれども。
これは中々見通しは暗い。もし投票率が高くなるとすれば、危機の時代だ。戦争が起こりそうだとか、消費税を15%にするといった法案を自民党が出してきたら、投票率は高くなる。
だから、投票率、投票行動の分析は非常に難しいし、行け行けといっても中々行かない。これといった妙案はないし、逆にみれば安定した社会といえる。
ただ、僕は安定した社会だけれど「気がついた時は遅いよ」と。だから、自分の権利は行使しておいたほうがいいよといっている。
コメント
先進国では投票率が低下することは一般的な傾向だ。投票を権利と考えるか、義務と考えるか。
例えば、オーストラリアはこれを義務と考えて、投票に行かないとペナルティが科せられている。ただ、だからそれでいい結果がでるかというとそれも難しい。権利なら放棄をする人がいる。
投票の機会をどういうふうに確保するかが問題になる。日本は日曜日だ。アメリカも、イギリスもそうだが、平日行われる。
職場に勤めている人が投票に行ってくるというと許可がいただける。それから、投票日が日曜日でいいとして、つまり今、期日前投票が前よりやりやすくなってはいるが、簡単に投票できるような方法が可能かどうかだ。
例えば電子投票でカードでアクセスして自宅からでも投票できるだとか、あるいは最寄り駅に投票所があって、そこで投票できるというふうなかたちで、誰でもがいつでも何処でも自分の都合のいいときに投票できる仕組みが可能かどうか。
ただ、政党の思惑とも絡んでくる。それをやったときに、自民党に有利なのか、民主党に有利なのか、国民の意見ではなくて党利、党略でやろうかやめようか。
だからマニフェストだってそうだし、あるいはネットを使っての選挙活動もそうだし、その辺のところが絡んでくるんで、非常に難しいところだ。
この内容は2007年4月26日ホテル横浜ガーデンで行われた講演を記録したものです。講演者の話の趣旨はなるべく忠実に伝えるように心掛けていますが、文章化するにあたり、その性質上多少異なる場合もあります。尚、記事の掲載に誤りのある場合は講演内容を優先するものとし、お詫び申し上げます。
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