第41回講演(3/4ページ)

 あとは人間ドックとか健康診断を受けるとBMIという、体重を身長の二乗で割ったものがどれくらいあるか、と同時に理想の標準体重に比べて実際どれくらいあるか、体重も問題になってくる。
 理想の体重は自身の身長をメートルで表したものを二乗したものに22を掛ける。170センチの身長ならメイターにして1.7メータになる。1.7×1.7×22で計算する。これで理想体重が計算できる。もっと簡単に、比較的近い値になるのは自身の身長から100を引いて0.9を掛ける。この場合はセンチメーターで170から100を引いて70、これに0.9を掛けて63の数字がでてくる、この辺が理想の体重だ。

 これだけ溜まる内蔵脂肪がどのような悪さをするのか。生活習慣病、高血圧、糖尿病、高脂血症はとにかく内蔵脂肪だ。これで様々な病気が引き起こされて、それがメタボリックシンドロームになる。
 タボリックシンドロームになると、その結果、動脈硬化が進んで心筋梗塞、狭心症、脳卒中、脳梗塞になる。グラフの横軸はコレステロールの絶対値、縦軸は如何に心筋梗塞などの冠動脈疾患になりやすいかというもので、日本人やその他のデータがあるが、コレステロールが増えるほど冠動脈の疾患になり易いというはっきりしたデータが取れている。一応、これをもとにして、コレステロールは200を切るといいが、220くらいまでを正常範囲にとっている。コレステロールが増えてくると、段々血管が詰ってくることはデータに表れている。

 中性脂肪のトリグリセライドというのがある。データに基づいて、一応150を越さない程度にコントロールしようというのが今の通常の人間ドックのデータの判定だ。

 HDLコレステロールは善玉だ。前述のコレステロールとは逆に多い方がいい。善玉が減れば減るほど心臓の病気になる確立が増えというデータとなっている。善玉は40以上欲しい。40を切る場合はかなり冠動脈疾患の発症が高くなってくるので危険ということになる。

 血管が詰まるとはどういうことか。血管の中には血球成分、赤血球とか白血球とか、血小板がある。血液サラサラ状態の時はこれらがきれいに分かれて流れているが、前述のような内臓脂肪があってメタボリックシンドロームになって血管の内側に動脈硬化ができてくる。そうすると、そこを流れる成分が通りにくくなり、さらに血小板がギザギザしたところにぶつかって血小板が活性化されてしまう。そうすると血小板がドロドロになって血小板同士がくっついたり、白血球にくっついたりして塊をつくる。

 これは実際に患者の静脈血を採って顕微鏡でみたものだ。血小板凝集した状態がわかる。ちなみに、この患者は睡眠時無呼吸といっていびきが大変で、いびきだけならいいが、夜、寝ている間に呼吸が止まる。
 例えばこのような講演会でいつのまにか意識を失って眠ってしまう。それは話が面白くないのではなくて、本人が睡眠時無呼吸になって眠ってしまう。
 このような睡眠時無呼吸の患者は息が止まるというのが問題ではなくて、血小板の活性化が高まって、将来脳卒中になりやすい、そこが問題だ。実際にこれは呼吸器内科の患者で、普段から血管の中にこのような血の塊が流れている。これが詰まるととんでもないことになる。

 心臓には心臓自体に酸素を運ぶ血管があって冠動脈という。これが狭くなると狭心症。詰まると血液が流れないから酸素が運ばれなくなって心筋梗塞になる。
 胸が急に痛くなる。それが数分ぐらいなら狭心症だが、30分くらい続くなら心筋梗塞を考えてすぐに病院へ行ってもらう必要がでてくる。
 これが脳に起こると脳梗塞ということになる。血小板同士が固まるようなことが脳の他の場所でつくられて、段々流れてきて、詰まると脳の塞栓になる。一方、脳の中で血栓がつくられて詰まると脳血栓症ということになる。突然に発症して麻痺が起こるという状態になる。

 では、生活習慣病はどれくらいいるか、厚生労働省が発表した。2005年4月のデータで我が国におけるメタボリックシンドロームの発症率は、高脂血症の有病者は3000万人で予備軍はわからない。高血圧は3100万人で予備軍はさらに2000万人いる。糖尿病は740万人プラス予備軍が880万人いる。
 麻痺が残って大変なことになるが、脳卒中が277万人で予備軍は不明、かなりいる。睡眠時無呼吸の人は息が止まって毎晩首を絞められて、そのうち脳卒中になってしまうことが、いま問題になっている。
 特に、脳卒中は272万人のうち要介護が160万人。このうち脳卒中は脳梗塞、それから脳の中に出血する脳出血、それからくも膜下出血を加えているが、脳梗塞は70%で血管が詰まる。

 普段から血管が詰まらないような生活習慣を守る必要があるわけで、くどいようだが血液サラサラがドロドロになって血小板が詰まってしまうと、このようになってしまう。

 2005年の朝日新聞の記事で、40歳以上は全員健康診断を受けてもらいたいと。とにかくの生活習慣をなおして病気にならないように予防しなければいけないということが叫ばれ始めている。従って予防医学のターゲットはメタボリックシンドロームだということになる。

 ウエストの周囲計が男性85センチ、女性90センチ以上はよくない。内臓脂肪が男女とも100平方センチメーター以下。中性脂肪が150以下。特に善玉コレステロールHDLが40を下回ってしまうのはよくない。血圧は上が130、下が85を超えないようにする。空腹時の血糖値が110を超えないようにと定義されている。
 死の四重奏、あるいは五重奏は糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、それに喫煙が加わると、デッドウィカルテットとかクウィンテットとかいうが、大変なことになる。

 (プロジェクターで投影されたグラフを指して)経済的な話をすると日本の人口構成は2005年は14歳以下がこの辺、一方15から64歳の働ける年齢がこの辺を占めていて、65歳以上がここになります。
 2030年には段々子どもの数が減って65歳以上が増える。その結果、今は65歳が人口の2割だが25年後には、その3割を占めてしまう状態になる。

 医療費の将来推計、国民医療費の国民所得に占める割合だが、今から比べて2025年には医療費の割合が倍になって、老人医療費が約50%。国民の所得に占める医療費の割合が今の2倍になり、その半分を65歳以上の老人が占めるということになる。
 2004年度の概算医療費は前年度より6200億円増加して過去最高の31兆円だ。70歳以上の高齢者の医療費は3.8%増えて12兆8000億円。概算医療費の約4割、とにかく生活習慣病の増大が医療費の増加要因の一つで、生活習慣病の予防が極めて重要であると考えられる。

 そこで、東海大学東京病院は抗加齢ドッグを開始した。これはどのような使命をもつか。医学部をもつ総合大学として大きく高齢化社会に貢献したい。国策となっている予防医学に積極的参入を行う。病気になった人を助けるのではなくて、病気に陥らない支援を各方面の専門家と協力し合って提供する。
 抗加齢医学は究極の予防医学だ。それにとどまらす科学的根拠に基づく抗加齢医学を実践し、大学としてのエビデンスを積み重ねていって、それを世界に発信していきたいと考えて抗加齢ドッグを開始した。

 東京病院は1984年の12月に伊勢原に次いで第二の付属病院として発足し代々木に位置し、駅から5分。各科がある。人間ドッグの年間受診者数は1300人以上という状況にある。
 AのアドバンスコースとBのベーシックコースがある。アドバンスコースはあらゆる抗加齢に関するデータを採ってそれに対して運動、食事、サプリメントの各専門家が抗加齢のアドバイスを行う。
 一方、ベーシックコースはともかく必要なエッセンスの項目を含んでいて、普通の人間ドッグと合わせて受診していただくというものだ。
 実際の人間ドッグの控室は全面改装し、工学部建築学科の岩岡教授に設計してもらっている。

 検査項目として、
 血管の動脈硬化の程度がどれくらいか、エコーという超音波を使ったり、脈波形という特殊な機械を使う。血小板がどれくらい固まりやすいか、動脈硬化の程度を調べる。血液がどれくらい老化しているかを判定する。体がどれくらい錆びているか、活性酸素、それに対してどれくらいの抗酸化力があるかをいくつかの項目で調べる。
 ビタミンA、B12とかC、E、その辺を診て判断する。それから、ホルモンバランス、デハイドロエピアンドロステロン(DHEA)副腎から出るホルモンとか、その他の成長ホルモンを測る。あとは免疫バランス。一般検査、前述のBMI、その他を測る。

 普段、サプリメントを飲んでいるかも知れないが、本当にそのサプリメントが必要なのかがわからない。例えば友人が飲んでいて「調子がいいからどうぞ」ということもあるかも知れないし、何となくビタミンが足りないので飲んだほうがいいとか。
 実際に当院の抗加齢ドッグを受診する人には普段飲んでいるサプリメントを持ってきてもらう。中にはきちっとしたサプリメントケースがあって、曜日ごとにきれいに分類されて、驚くほどの種類のサプリメントをとっている人がいる。しかし、本当にその人にとって必要かどうかわからない。その辺も踏まえて、当院の抗加齢ドッグはホルモンバランス、それからビタミンとか、実際に採血して、測定して、本当に必要なサプリメントは、あるいはホルモン療法が必要なのか、逆に変なサプリメントをとっている人には、高いお金を使って毎月サプリメントを買う必要はない、普通の食事をすれば大丈夫でしょうということを話させていただいている。

 人間は200や300歳迄は生きられないが、このデータに基づいて生物学的に言われる120や125歳くらい までを目指すには、いま何を注意するかを具体的にお話しさせていただいている。
 共同通信で、インターネット上にもニュースとして取り上げられていたが、血中濃度の高い男性は年齢と共に減っていく副腎から分泌されるホルモンの一つで、これが高い男性ほど死亡率が低く寿命が長いというデータが久留米大学からでた。940人を対象に約27年間追跡した世界でも例のない研究だ。

 福岡県で1978年から79年に行われた住民検診で男性396人、女性544人の血中濃度を測定した。昨年、2005年に同じ人について、その人たちがどのような経過を辿ったかの調査で、男性は8割が生死が判明し、検診時の血中濃度を高い、低い、その中間と単純に別けたところ、DHEAが高い人は低い人に比べて死亡率が8割高いという、とんでもないデータがでたようだ。女性は女性ホルモンの影響などで濃度と寿命の間の関係はでなかったそうだ。

 どういうことかというと、成人男性の血中濃度を測定すれば、その人のおおよその概算寿命を算出することが可能ではないかということがいわれ始めていて、欧米ではこのデハイドロエピアンドロステロン(DHEA)が若返りの薬としてもてはやされて、補充療法なども行われている。

 昔から、こんなものを測定していたのかと考えられるが、私たちの推定では1978年から79年にDHEAのことをやっていた人はいないので、多分血液が保存されていて、血清保存されていたものを使って、このようなホルモンを調べたのではないかと思う。このようなものを調べると、その人が現時点でだいたいどれくらい生きられるかのデータがとれてしまう時代になっているということを、一応お知らせしたい。

 東京病院では受診者に技師長が検査の説明をして、全部にコンシェルジュが付き添う。特別な食事をとっていただく。これを私たちは抗酸化御膳といって、五穀ごはんがあって、肉もあり、豆腐もあり、吸物、サラダがついて、デザートがついて、これで690カロリーくらいだ。
 何度も試食して美味しいと思った。減塩でこの中に食塩は5グラム入っていない。体が錆びない抗酸化の組み合わせで、受診された人にはメニューをコンシェルジュが説明をする。45品目入っていて、かなり評判がいい。

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