第40回講演(2/4ページ)

 

−スライド14〜15[ニューズウィーク2006年9月15日号]−

 次に最新号のニューズウィークをみていましたら、表紙が既に、これは15日ですけれども、安倍晋三さんの大きな写真で、表紙の文字が「wild card」と書いてあるんですね。「wild card」という「わけのわからない」「何をやるかわからない」人のことを「wild card」というのですが、つまり、ニューズウィークも、もはや注目は小泉ではなくてポスト小泉に焦点を合わせて特集を組んでいます。そしてその特集の記事が「Asia mystery man」、「アジアのなぞの人」となっています。よほど小泉さんはシンプルでわかりやすかったですけれども、安倍さんはこれから何をやるかよくわからないという見方が「He is already worrying the neighbors」としてつまり「近隣諸国を心配させている」としています。
 ポスト小泉、つまり「安倍」は大変な時期に総理に就いた、このときは未来ですから「就くことになる」と書いています。世論調査は、「韓国は日本を北朝鮮よりも脅威だと思っている」、そして「中国は軍事拡大を注目している」というようなことをいっています。
 北朝鮮は近く核実験を準備しており、そして、アメリカは米中、米韓、日米、ともに3国とも難しい状況にこれからなるのではないかという見方をしています。これは中々面白い見方であります。
 そして安倍さんは頑固なだけに緊張関係がもっと悪化するだろうということを言っています。安倍さんは常に、今までの総裁選挙でも度々言っていましたけれども、東京裁判の合法性に対して疑問をもっており、憲法改正、教育基本法の改正に意欲をみせているということがニューズウィークに出ています。

−スライド16〜17[ファーイースタンエコノミックレビュー]−

 そしてもう一つの、これはアジアの週刊誌ですけれども「ファーイーストエコノミックレビュー」という雑誌があります。これは中々権威のあるアジア問題についてのジャーナルなのですが、これがまた面白いことに大見出しが「日本の改革は逆戻りする」として記事を書いています。つまり、ポスト小泉の改革の勢いは減速するだろうとし、小泉の退陣は短期間の市場改革黄金時代の終焉、終幕だとしています。再び厳しい規制だらけで、政府の介入と現状維持の時代に逆戻りするといっています。安倍さんは小泉伝説に合わせた政治を行わなければならないだろうとしています。
 小泉さんは最初に政権に就いたとき、日本は絶望的で、経済はデフレの崖っぷちで、銀行破綻や失業が高まって株式会社日本会社は世界の競争力を失いつつあった。なんと森首相のときは支持率が10%に落ちてしまった。普通LDP、つまり自民党の支持率はせいぜい30%で危険信号なのだけれども、このときは10%になってしまったというような書き方をしています。そして、小泉さんは外から人材を求めたとし、伝統的な党については何ら関心をもたなかったとしています。よく言われていることですが、学者、経済界、芸術家との付き合いが非常に多く、内閣閣僚も年功序列とか、好みとか関係なく選んだとしています。
 安倍さんは小泉さんと違って、これからは外部にアドバイザーを求めないのではないか、つまり党内の意見を聞くことになるのではないか、官僚と自民党の内部からの意見を聞かざるを得ないともいっています。
 今夜あたりから山梨県の別荘で閣僚選びの構想を練っている最中だと思うのですけれども、「ファーイーストエコノミックレビュー」はこういうような言い方をしています。ポスト小泉ジャパンはノーマルジャパン、普通のジャパン、つまり小泉さんの後は普通のジャパンへの回帰、戻っていくだろう、頭のところで言ったように逆戻りというようなことを結論付けている。はたしてこの見方があっているかどうか。

 

 

−スライド18〜22[アンケート結果]−

 ここで、外から見た小泉さんというのは終わりますが、これは日経BPのアンケートが出ていたのですが、「戦後歴代首相のうち大きな功績を残した首相3人を挙げよ」ということです。20何人はいると思うのですが、その中でトップはやはり吉田茂さん、そして田中角栄、3位についたのが小泉淳一郎さんとなっています。これは1万3000人の中の票数が吉田茂7433、田中角栄5754...ということです。
 その次に第2問の「小泉退任後政治はどのように変わっていくか」ですが、「改革の負の側面が強調されて揺り戻しが進む」という先ほどの「ファーイーストエコノミックレビュー」の見方と似たようなこと、これがトップとなっています。「これまでと同じようなペースで改革が進む」と答えた人は2番手、「抵抗勢力が勢いを取り戻して小泉政権以前に逆戻りする」これが3番手、「これまで以上に改革が進む」は4番手、1000人しかいないとなっています。この3番は復党を含めてそういうことを意味しているのでしょう。
 それから、「小泉首相退任後政治はどのようになって欲しいか」という願望のほうなのですが、トップである「これまで以上に改革が進む」というのが願望なんですね、しかし現実はそうではないということです。「改革の負の側面が強調されて揺り戻しが進む」というものは相変わらず2位にあり、最後の「抵抗勢力が勢いを取り戻して小泉政権以前に逆戻りする」という願望はあまりないということです。
 ではなぜ5年以上も政権が維持できたかという理由は、第1位は「国民に直接訴えかけるメディア戦略の巧みさ」、要するにマスコミをどう利用したかということにあるようです。それから「民主党ほか野党の実力不足」が第2位、第3位には「派閥自民党政治を壊そうとした」ぶっ壊すというのが5年以上の政権を維持した理由であるということです。「政治家としての資質・リーダーシップ」というのはあまりたいしたことがない。とくに面白いのが「郵政民営化ほか構造改革」を叫んだ。これが5年以上政権を維持した理由だというのが、一番下ではないのですけれども、第5位というアンケートの結果です。
 やはり「小泉さんの改革の最も評価できるもの」というのは「ぶっ壊した」ということで、「郵政民営化」は3位ということになっています。

−スライド23−

 これは小泉さんの師匠といわれる松野頼三さんが「妥協政治」「どうしてそういう風になったのだろうか」と答えているインタビューにあったのですけれども、「妥協政治、取引政治に飽きちゃった国民はわかりやすい小泉政治に時代を感じたのだろう」と彼はいっています。

−スライド24〜26[小泉年表]−

 小泉年表を一応資料として書いておきましたが、省きます。
 ここで、2004年に自衛隊のイラクサマワへの派遣を決定しています。
 小泉が再訪朝して金正日と会ったということがありました。
 イラクの日本人の人質事件が起きたり、日本人が殺されたりしています。

−スライド27〜28[小泉内閣の公約]−

 小泉さんの公約を書いてみました。
 靖国神社参拝が6回やり、8月15日当日参拝したということが物議をかもしました。郵政民営化と国債30兆円枠を決めたけれども、これも実現しなかった。年金改革については、約束はしましたけれども未だにくすぶっていて、とくに社会保険庁のズサンな経理が発覚して、年金改革は正に前途多難だということに至っています。
 そうしますと、公約をしたのは郵政民営化と靖国神社の公約だけではないかという感じがしないでもありません。

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