第37回講演(2/6ページ)
日本の企業の99%を占める中小企業では、ほとんど景気回復の実感が得られていないという状況のもとでの踊り場脱却宣言ということになる。その意味では、決して日本の今おかれている現状はとても楽観できる状況ではないだろうということが私の感じているところだ。 3ヶ月ごとに発表している日銀の短観によると、業況判断DI(Diffusion Index:ディフージョン インデックス)、全企業のうち景気が良いと思っている企業の割合から景気が悪いと思っている企業の割合を引くというものだが、6月時点でみると大企業と中小企業のおかれた立場を明確に表している。6月時点での大企業製造業では、業況判断DIは18という数字がでている。これは景気が良いと思っている企業の割合から悪いと思っている企業を引くと18%で、良いと思っている企業が悪いと思っている企業よりも18ポイント多いということだ。これは3月時点で14ポイントだったものが4ポイント上昇し、6月時点で18ポイントとなったことを示している。 大企業の非製造業についても15ポイントで、良い方向へ向かっていると判断している企業の割合が増えているということになる。問題は中小企業で、中小企業の製造業では、6月は+2ポイント、3月は±0ポイント、すなわち良いと判断している企業と悪いと判断している企業が同じ割合であったということだ。非製造業にいたっては、3月-14ポイント、6月で-12ポイントで、景気が悪いと判断している企業のほうが圧倒的に多いということになる。 非製造業というのは、電力、サービス関連産業、小売、流通などだが、つまり、物が売れないことを表していることになる。いずれにしても、中小の非製造業がこれだけ業況判断DIが悪い、すなわち悪いと思っている企業のほうが圧倒的に多いということは、実は、正に今の日本の実態を表していることで、物が売れないことの証明になる。 労働者の所得をみると、景気が回復しているにもかかわらず、収入がほとんど伸びていない。むしろ非製造業では、収入が下がっている状況だ。何故このようなことが起こるのか、ひとつは、非製造業を中心としてリストラというかたちで、雇用の調整が行われているということだ。もうひとつは、常用雇用を減らして、つまり生産員を減らしてパート、アルバイトなどの賃金の安い人たちをドンドン雇うかたちを企業はとっている。そのために、所得全体としては非常に伸び悩みを示しているということだ。 このように、今、日本の景気、経済がおかれている現状は正にまだら模様という部分が強く出ている。つまり地域的にも景気の良し悪しがはっきり出ているということで、関東と中京圏は良いけれどもそれ以外のところはあまり良くないとか、企業の規模別に見ても大企業は良いが中小企業はよくない。それから、製造業は良いが、非製造業はあまり芳しくないというような要因が強く出ている。 第37回講演(3ページへつづく) |