第37回講演(1/6ページ)
「金融自由化と資金調達」
「金融自由化と資金調達、企業が成長する金融制度」について、最初に経済の現状を簡単にお話し、本題に入らせていただく。
踊り場を脱却したと、政府の判断が下されているわけだが、踊り場を脱却したという割には不確かであり、あるいは実感として感じられない部分がある。その根本的な要因がどこにあるかが問題だ。私自身は、企業、経済を根本的に支えているのは基本的には中小企業であると思っている。
企業が成長しなければ経済は成長しない。そのためにはどのような金融制度が必要か、金融制度だけではなくて、根本的には実は教育ということが礎になってくる。そのことについて、話をさせていただく。
まず、実際の統計データ等で、景気の実態を把握していただきたい。
最近の経済成長率の推移と成長率の要因分解にもあるように、経済成長そのものは、2002年12月に景気回復局面を迎えたということで、2002年10月からはプラス成長ということで、景気の実態経済判断が示されている。例えば、2002年は、名目成長率は−0.7%ということだが、実質経済成長率は0.8%、同じように2003年の名目成長率は0.8%で実質成長率1.9%、2004年は名目0.8%、実質1.9%となっている。これは、プラスの成長率なのだが、この数字の特徴的なことは、名目の成長率よりも実質の成長率の方が高いということで、これは物価が下落している、つまりデフレであるということだ。デフレであるために、名目成長率よりも実質経済成長率の方が高くなってしまうということになる。
政府が踊り場を脱却したということの根本的な数字の要因は、2004年度の1〜3、すなわち2005年の1月から3月だが、名目2.9%に対して実質5.8%、2005年の4月から6月が名目1.7%に対して実質3.3%と、かなり高い経済成長率が統計上示されている。比較的高い成長率が達成されたということで、踊り場を脱却したということなのだが、実は、個々の統計データ、あるいは実感としての経済をみていくと、踊り場を脱却したと断言できるほど我々の生活実感が変わっていない。むしろ経済的には厳しい状況が続いているのが実感としてあげられる。
経済成長率を支えている要因を説明すると、成長率の要因分解に示されているように、2003年度と2004年について経済成長率の要因分解では、例えば2003年度成長率2.0%を達成している。しかし、実態的には2%のうちの1.2%が企業の設備投資、それから1.1%が輸出等で、主なものは対アジア、とくにその中でも中国ということだ。
同じように2004年度では、成長率1.9%のうち、0.8%が設備投資、1.4%が輸出等で達成されている。この両年度もそうだが、日本の場合は、昔から設備投資と輸出によって牽引される経済成長で、これが日本の経済成長の特徴となっている。これがアメリカであれば消費が牽引する、つまり物を買うということで経済成長率が達成されることになる。
今、実態的に成長は何によってもたらされているか。輸出によって誘発される設備投資が非常に大きい。すなわち、最近の経済成長は、対アジア向けの輸出が非常に大きなポイントとなっており、とくに対中国向けの輸出ということだ。中国向けの輸出が何故伸びるか、ご存知のように日本の製造業を中心とした工場の現地進出、現地生産を行うからだ。大企業だけではなく、中小企業も積極的に現地に進出している。
中国内部では部品などはまだまだ整っていないので、部品の供給は日本からの輸出で賄っている。そうなると、部品を中心として、対中国向けの輸出が増えてくることになる。中国が成長すれと輸出が伸びる。輸出が伸びれば輸出を賄うために、つまり増産を達成するために日本の国内で設備投資を一生懸命行うという構図となっている。すべてではないが、対アジア向けの輸出が成長の大きな牽引役となっているといえる。
業種的には、日本の輸出の7割は上位30社で賄われている。この30社は、トヨタ、ソニーであるとか、多国籍展開を行っているいわゆる多国籍企業だ。このように、30社で日本の輸出の7割のシェアを占めているというのが、現在の日本の実態だ。
今般の景気の上昇をひたすら支えているのは、トヨタに代表される自動車関係、ソニー、松下、三洋、シャープなどに代表される電気機械、いわゆるデジタル関連が支えているといって差し支えない。
業種的に偏りがあり、地域的に偏りがある、すなわち、アジア向けの輸出のほとんどが自動車、デジタル関連を中心とした電気機械産業というものが成長の牽引役になっている。
業種に偏りがあり、且つ大企業に偏りがある。景気が回復していると統計的にでてくるが、実態的には大企業の自動車、大企業の電気機械が大きな牽引役となっていて、底の拡がりがない。中小企業にまで、景気の拡大が及んでいるかというとそこまではなっていないというのが大きな特徴だ。
第37回講演(2ページへつづく)
|