第34回講演(2/3ページ)
どうやって早く前立腺癌と診断するか?
最も簡単で、世界中で広く用いられている検査として血液の中の前立腺特異抗原(別名、prostate specific antigenの頭文字をとってPSAと呼ばれています)を調べます。検査に必要な量はたった2mlほどですし、費用も約1500-2000円程度です。この値が、4ng/ml以上になると前立腺癌が疑われます。ちなみに4J/ml以下で前立腺癌が発見されるのは約2%程度ですが、4-10ngでは15%、10-20ngは42%、20J以上では75%と高くなります。この4ngという数値をおぼえておいてください。このPSA検査は、皆様の住んでいる町や市によって補助金を出しているところがありますので、聞いてみてください。また上記のPSA血液検査以外に、直腸診と言つてお尻から指をいれて直接前立腺をさわる検査と、お尻から超音波検査用のプローブをいれて前立腺の大きさや形を調べる検査の三つが主な検査法です。これらの検査で前立腺癌が疑われる場合は、先に述べたお尻からの超音波検査をしながら細い針で前立腺を6-8箇所刺して前立腺の組織を採取し、顕微鏡で調べ、最終的に癌が含まれていないかどうか診断します。
普通、この検査は通院あるいは1泊入院で行います。注意しなければならないのは、1回目の生検で癌が見つからなかったといって安心できません。この生検はいわば太平洋の中のハワイ島を6-8箇所とってきて調べているようなものです。たまたま1回目の生検では癌のある場所に当たらなかった可能性があります。
PSAが高い場合は、2回、3回と生検の検査を繰り返すことが大切です。もし癌が見つかった場合は、前立腺の周りのリンパ節に転移していないかどうか調べるために5mm毎に身体を輪切りにして調べることのできるCT検査や、骨に転移していないかを調べる骨シンチ(別名、骨スキャンあるいは単にRI検査とも言います)検査が必要となります。
前立腺癌の治療は、癌の進み方によって異なる
残念にも上記の検査でリンパ節や骨に転移が見つかった場合は、ホルモン療法と呼ばれている女性ホルモン剤の飲み薬と注射の治療となります。このホルモン療法がずっと長く効いてくれればいいのですが、多くの場合、2-3年で薬が効かなくなり、その後1-2年でお呼びがかかることとなります。
一方、転移の認められなかつた方は、限局性前立腺癌あるいは早期前立腺癌と言って完全に治すチャンスがあります。その代表的は治療法は、天皇陛下も受けられた根治的前立腺摘出術とよばれる開腹手術です。この方法は世界中で最も広くおこなわれていますが、お腹を切る、出血するため輸血が必要な場合がある、1ヶ月ほどの入院、170万ほどの医療費、約10人に1人の1割に術後の尿失禁、約8割に勃起不全などが起こってきます。
また最近の新しい手術法としてお腹に5箇所に1cmほどの穴をあけて行う腹腔鏡下手術があります。伊勢原本院の寺地教授はこの手術法の日本における最もすぐれた泌尿器科医の一人です。またもう一つの代表的な方法として放射線療法があります。最近この放射線療法にも新しい方法が開発されてきました。従来の放射線療法は、開腹手術に比べると効果が劣り、前立腺以外に直腸にも多く放射線がかかるため治療後の合併症が高いという欠点がありました。それらの点を克服するため、小線源療法と言って、陰嚢の裏から30本ほどの針を刺してその針を通して弱い放射線を放つ小さなシードを100個ほど前立腺全体に留置する治療法がアメリカで開発されすでに広くおこなわれています。2004年4月から日本でも保険で治療可能となり、多くの施設でとりいれようとしています。
また従来の放射線療法と同様に外側から照射しますが、より前立腺のみに照射できる3次元原体照射法や強度変調放射線療法と呼ばれる放射線療法も可能となってきました。しかし、小線源療法は針を刺さなければいけない、前立腺癌の悪性度が高かったり、進行が少し進んでいる場合は、小線源療法のあとに外側からの放射線療法の追加が必要になります。
また小線源療法で1週間程度、外側からの放射線療法では2週間の入院十1ヶ月ほどの通院治療が必要ですし、医療費はいずれも200万以上と高額になります。
何かもっと患者さんにとってやさしい方法がないかということで今回お話する高密度焦点式超音波療法(別名ハイフ)を開発しました。
第34回講演(3ページへつづく)
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