第33回講演(3/4ページ)

 

 公的年金制度が現在どのようになっているか。現在、我が国の公的年金制度は基礎として国民年金があります。基礎年金です。これは3種類に分けられまして、第一号は被保険者、自営業者。第二号は民間のサラリーマン、或いは公務員。そして第二号の配偶者が第三号となっています。20歳以上の国民は何処かに属するようになっています。
 国民年金は建物になぞらえて一階部分といいます。そして、その上に厚生年金、上積みされるものです。これを二階部分といいます。或いは公務員等であれば共済年金という形で上積みされます。厚生年金の場合は一定の決まりがあって、すべての法人の事業所、それから常時5人以上の従業員を使用する事業所の場合、これは厚生年金に入らなければいけないことになっています。

 共済年金は国家公務員、地方公務員、私立学校教職員等です。二階部分があるわけですが、国民年金には二階部分がないので、自営業者等が今のモデルの6万5千円から6千円くらいでは足りないという場合には、これに上積みしてさらに保険制度に加入できるように国民年金基金というのがあります。さらに厚生年金については厚生年金基金、さらに上積みをするというので、三階建てといういい方もあります。或いは適格退職年金というのもあります。

 国民年金基金の場合は第一号被保険者ですから、自営業者がプラスアルファーしている。しかし、これはあくまでも公的年金ですから、年金保険料を払ったときに所得から控除ができる優遇措置がある。共済年金や厚生年金、或いは厚生年金基金にしても同じことがいえるわけです。

 厚生年金と厚生年金基金のところに代行部分というのがあります。厚生年金基金が国に代わって厚生年金の一部を取り立てて運用するわけです。しかし、運用があまりうまくいかないで、最近はこれを返上するところが多い。
 適格退職年金は企業が生命保険会社と契約して、従業員のために一定の要件を満たしていれば税法上の優遇措置が適用されるものをいいます。これらはすべて公的年金ということで税制上の優遇措置が適用されています。最近は厚生年金基金の部分で401Kのような従業員と企業が契約をして、その運用について従業員の意志が反映される制度もでています。運用は自分で選ぶので、運用益がどのくらいあるかは自己責任ということになっています。

 年金制度に老齢年金、傷害年金、遺族年金というのがあります。無事定年退職した方は老齢年金ですし、傷害を負った方は傷害年金、遺族の方には遺族年金が与えられます。それぞれの制度の中に、3つの種類が入っています。そして、所得が少なくて保険料を負担できない場合、免除の制度があります。これには法律で定まった法定免除を受けるものと、自分で申請するものと2種類ありますが、例えば傷害年金の受給者とか、或いは生活補助の受給者は法律で免除されています。2000年の時点で、全体の4.5%が法定免除になっています。申請免除は何らかの理由で納付が困難な場合です。2000年の時点で12.9%になっています。この他、半額免除の制度もあります。

 原則65歳以上の支給になっていますが、60歳からの繰り上げ支給が可能です。1年、2年と遅らせて受給を受けることも可能です。年齢にもよりますが、60歳から繰り上げ支給を受けますと約30%減額となります。これが一生涯続くということになります。
 繰り下げて、受給を後に延ばすと毎年0.7増えて、70歳から受給すると42%増えるということもありますが、長生きをしないと損になってしまいます。
 納める保険料と給付の割合を考えるとき、国民年金はこんなに少ない、議員年金は高いではないかといいますが、納めた保険料を考えて頂きたいということです。給与水準によって一定割合を納めるので、金額もかなり大きい。
 私学共済の場合、比較的学歴が高くて初任給が高い。ただし勤めている期間が短いのですが、かなり納めている。その反映として給付額が決まってきます。金額だけをみるとずいぶん差があるとの批判がでています。議員年金についても国庫負担がずいぶん多いという話もありますが、10年間議員でないと資格がないとか、厳しい条件もありますので、一概にどうこうはいえないと思います。

 

現行制度の問題点と課題
 年金の空洞化がいわれています。空洞化をさせないために、保険料を引き上げたり給付水準を引き下げたり、或いは支給開始年齢を引き上げたりという問題が起こってきます。別の角度からみると、世代間の不公平になってきます。これは、同じ原因をいろいろな角度からみているということになります。

 年金の空洞化がなぜ起こるか、これは我が国の人口構造が急激に変わってきていることです。年長者の割合が増えてくるということです。いま、65歳以上の人口が総人口に占める割合が約20%です。これが10年後の2014年には25%台になります。そして、日本の人口のピークだと推計されている2050年には35.7%、3人に一人が65歳以上になる。これは確かに年金制度が空洞化する危険がある。3人に一人は子どももいますから働いている人だけで支えるのはかなり大変になることは想像できます。それが保険料を引き上げるか給付水準を引き下げるか、或いは支給開始年齢をさらに繰り下げるか。
 ドイツではいま、法案的には65歳を70歳にしましょうということが通ってはいるんですが、実施できるかどうかは分かりません。

 経済成長率の問題もあります。つまり、いまは総報酬制ですから月収の一定割合を保険料として納めるということですから、所得が順調に伸びていけば保険料収入も順調に伸びていきます。年金財政としては安心です。高度成長時代はまさにそうであったわけです。ところが、低成長時代に入ってきますと所得は伸びない。逆に名目所得は下がってくる。所得が下がると保険料収入も下がってしまう。しかし、年金の給付を受ける人たちは増えていきます。これはかなり厳しい状況です。

 就労構造が大幅に変化しています。正規の従業員の比率が落ちている。パート、アルバイト、派遣とか、さまざまな形で正規の従業員から比べると短時間しか働かない。週、一定時間以上働けば社会保険の加入資格がありますが、このような人たちに社会保険は適用されていない。特に若者が多い。年齢的には保険料を納める年代になっているのに納めていない。しかも、この人たちは受給資格もなくなってしまうかも知れないという問題がでてきます。
 現在、国民年金の納付率はどれくらいか。正式には検認率といいますが、納めなければいけない人に対して実際に納めている人は2002年度で62.8%です。4割近くが納めていないことになります。免除者は外しています。これではかなり空洞化がおこってくるわけです。

 もし、いまの制度のままで年金制度を維持しようとすれば納めている人の保険料を大幅に引き上げるか、或いは税金を投入するしかない。しかし、所得が伸びない中で保険料を簡単に上げることはできない。税金を引き上げることも、税金や保険料を納めていない人の分を、まじめに税金を納めている人が負担するということは非常な不公平感を生むかも知れないという問題がでてきます。

 税方式にすると所得税では無理です。それは払っている人は決して多くない。高い税率が適用される人が大部分を払っている。そうすると、その人たちにもっと負担を強いることになる。これには限度がある。もし、税金を投入すると税金しかありません。広く薄く、全国民に負担して頂ける。
 1%消費税を上げると約2兆円ちょっと増えます。この財源が一番あてになります。高齢者でも消費はされます。個人金融資産のかなりの部分を高齢者が持っているという統計もあります。消費税くらいは全国民の負担ですから、この方がいいのではないかとの議論があります。

 年金目的税を民主党が提案しています。租税の立場からいうと、税金は一般税といって集めた金をどう使うか、拘束されないのが一番いい。特定の目的のために徴収することになると、年金財源が足りなくなったら年金目的何パーセント上げるかということになります。
 では、老人医療費が足りなくなったら老人医療費の分、さらに消費税を上げましょうとか、或いは介護保険のために何パーセント上げましょうと、どんどん上げていかなくてはならなくなります。
 また、悪用されることも懸念されます。入ってきた年金を積立金で無駄に使われる。これも監視しなければならない問題があります。こういう問題があることを目的税の場合はご承知頂きたいと思います。

 世代間の不公平では、若い世代ほど自分たちが払った保険料に比べて給付を受ける年金の額が減って、率が悪くなるということがあります。ある世代は納めた金額の8倍くらい貰ている。それが段々減ってきて2倍を切る。だから不公平だといいますが、ただ、1倍を超えれば少なくても損はしていない。

 年金保険料の負担は個人の立場でみると、個人の負担する分と同じだけ雇い主が払っています。さらに公費負担として、現在、政府が基礎年金の3分の1払っていて、近い将来2分の1になる。このように払っていますから絶対に損はしない。そして、物価スライド、賃金スライド制になっていますから、損はしないようになっています。ただ、前の世代から比べると割合が悪い。しかし、そういう意味から空洞化は公的年金では、さほど心配はないということです。ただし、積立金の運用などで指摘がされますので不安があると国民は心配してしまいます。

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