第33回講演(4/4ページ)
改革の方向性 政府の改革案、民主党も改革案を出しています。民主党案はスウェーデンの年金制度とそっくりの形で出ています。それぞれ問題点があります。 数年前スウェーデンが所得比例年金に一本化して、その時に所得比例年金ですから保険料ゼロの人はまったくゼロになってしまいますから、そこで最低保障年金を足すということで、これを税金で賄うということです。こういう制度を入れています。 厚生年金は保険料率が13.58%すが、これを毎年0.354%づつ引き上げて17年度に18.3%にしてそれ以上は上げない。これは年金財政が苦しくなったらジワジワと上がっていくのは一番の不安なんです。始めから高いなら高いで、これ以上あげませんという方が人々は安心です。或いは将来の生活設計がたてやすい。それをもっと徹底しているのが民主党で、民主党は18.58%をこれ以上あげると、個人も大変ですけど、むしろ中小企業が大変になります。そこで13.58%を固定しますということを提案しています。 それでは、財源が足らなくなる。どうしますかということです。2007年度から年金目的の消費税を導入する。そして、所得比例年金が一定額に達しない人には消費税で上げた財源をあてて最低程度を保障する。最低保障年金6万6000円程度です。ですから今の国民年金がフル支給されたのとだいたい同じです。そのために当初税率3%の消費税を考えているわけです。 どれくらい給付するかは、政府案では現役世代の平均手取り年収の50%は確保したい。民主党も50%程度は確保したいとなっています。ここのところは政府案と同じです。
問題点と課題 負担はこのくらいで給付はこのくらいですという、しかし、どうしたらこのようになるかという関係を示していません。あくまでも目標なんです。13.58%でやっていて、保険料がどれくらい入って、だから給付はこれくらいできるという具体案がまったくないという問題点もあります。 政府の案も、国庫負担を2分の1にしますといいますが、財源をどうするか、これも曖昧です。小泉さんが総理の間は消費税は上げないといっている。そうすると消費税では賄えない。他に何があるかというと、大きな税金は所得税です。しかし、所得税は今でも重税感があります。公明党は最大25万円までを所得税の定率減税を廃止しようといっています。確かにこのような考えもありますが、これはちょうど働き盛りの中堅所得者がこの恩恵を受けていますから、どのくらい受け入れられるかという心配もあります。 政府の場合にも、2007年以降に消費税を含む税制の抜本改革を行って財源確保といっていますが、どうするかまではいっていない。 民主党案が示す年金制度の図はおかしいと思います。最低保障年金がある段階から下がってきますが、これと比例部分のカーブが緩くなるところが一致していない。これは図が下手だということで済むかも知れませんが、縦軸横軸の目盛りが同じだとすれば、所得比例年金が1対1の割合である必要はありませんが、カーブか45度線ですと、納めた保険料総額と貰える所得比例年金がほぼ対応しているわけです。
公的年金制度の見直し 経済成長率は昨年あたりから少し上向いているというんですが、あてにはできない。少なくても高度成長は無理。そういう中で実現可能な制度を組み立てていく必要がある。そして、就労構造についても、社会保険の適用条件を緩めるにしても、恐らくもっと多様化していくであろう。朝、9時から5時まで働く人にとっては減っていくのではないかという気がします。自宅でコンピュータを操作しても仕事ができるということですが、多分いろいろな人が増えている。そうすると、保険料を納めてくれる人はへってくるのではないか。これも考えておかなくてはならない。 制度が一元化するのが分かりやすいというのですが、過去の経緯がある。人々が過去の制度のもとで将来の生活設計をしてきたのに急に変えられては困る。いくら激変緩和の以降期間を設けても、不満が残る。他方で、そのようなことをいっても制度が存続しなければ意味がないということがあります。 1947年から3年間くらいの団塊の世代があります。この人たちが60歳で定年退職する。定年は65歳になるかも知れませんが、この人たちが65歳に達するころから年金財政はかなり苦しくなります。逆にいうとその前に改革をしていく必要があるということです。 社会保険制度をどうするか、或いは税金をどうするかということは、我々の社会の中でどう助け合おうか、どんな社会をつくるかにつながってくる非常に基本的な問題なのです。
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