第28回講演(2/3ページ)

 

誰もがいつでも利用できる福祉サービス
 80年代に臨調・行政改革で検討され、福祉も公私の役割分担も見直さなければならないとか、民間の活力を導入して、民間でやってもらえるところはやってもおうとの議論がでてきます。おカネの問題から、役割分担を立て直さなければならないと言う議論と、もう一つは在宅が広がっていったことで、誰もがいつでも利用できる福祉サービスが期待されるようになってきました。選別主義から不平主義と言われていますが、日本は選別主義と言われる時は、所得制限をしたこととされています。しかし、本来選別主義は必ずしも低所得に限定することではなく、特定の条件で狭くサービスを限定することですが、日本は低所得者を対象にしてきたことから、高齢化が進んで、誰もが利用できるサービスにしていかなければならないと言う要求もでてきています。
 国の医療保険の財政が苦しくなってきています。国家財政も厳しくなっています。財政問題から見直さなければならないことと、一方では高齢化が進んで特定の人だけでなく、誰もが利用できるサービスにしていかないといけません。89年のゴールドプランは消費税を導入し、福祉目的税の議論もありましたが、福祉関係者は当時、目的税にすると、カネがある時はいいが無い時は入らないということで反対していました。
 国はゴールドプランの形で具体的にサービス目標を設定して、99年までの10年間に老人ホームをいくつにしますとか、ホームヘルパーを10万人にしますとかを発表しました。数字を挙げて計画を示したのは画期的なことでした。これに合わせて老人福祉法等を策定して、地方も整備計画を立てていきました。これが老人保険福祉計画です。
 在宅を中心に誰もが利用できるサービスにしていく、市町村を中心に整備計画をつくってサービスを提供していく、このような体制を整えました。公的な責任で整備計画も目標値を示していて画期的だと評価しました。ここまでは公的な責任で措置と言っていますが、措置は行政処分と説明されていますが、簡単に言うと放っておけないから公的に保護しますと言うものです。行政が責任をもって保護する形だから、おカネも公的に責任もってやりますと言う形です。
 サービスを受ける方は権利として請求できるようにはなっていませんでした。生活保護だけは権利として請求できますが、他の福祉のサービスは行政が放っておけないから援助しますと行政が決めて、対象者側は保護してくださいと請求できるものではありませんでした。ただ、カネは公的でやりますと言う体制でした。
 在宅中心に、誰でも利用できるようにすることを全部公的責任でやることはなかなか難しい面がでてきます。公私の役割分担、見直しが言われていましたので、民間活力の導入でシルバーサービスが言われ厚生省も健全育成で指導室をつくったりしていました。しかし、大きくは広がりませんでした。大きく転換を見るのは介護保険のところからです。
 介護保険の導入は、それまで公的な責任で公的に保護するように、制度上は進んでいったものを、措置から契約へ、契約を結んで利用する制度になっていきました。自分でサービスを選び、契約を結ぶにあたって必要に応じておカネだけを援助しますと言うものです。
 今までは、直接的に形の上では公的に保護をして、直接サービスを提供していました。今度はおカネを保障します。自分でサービスは選んで利用しなさいと、形を変えました。
 医療保険が財政悪化で苦しい。福祉でも介護の施設がありましたが病人の介護の施設化となってしまいました。利用の仕方もおカネの持ち方も違うと、議論になっていきました。抜本的に社会保障の構造改革をしたいのが大きな理由の一つとしてありました。超高齢化の社会に備えて新しく立て直しをしないと、将来持ちそうも無いという問題がありました。

 

介護を家族から社会全体で捉える制度に
 新しい介護の仕組みをつくる議論がされていました。公的保護ではなくて自分で選んで契約していこうとする制度、利用者主体になったのが大きな転換点です。実施自体は市町村が公的な責任でサービスを提供してきましたが民間に委託してやってきた部分がありました。民間は福祉の枠外でしたが、これが今度は指定事業者として基準を満たしていればこれを認めて民間企業にサービス提供者になってもらおう、選択して契約事業者を決めなさいと言うことになりました。
 自分の選択、自己決定を尊重していこうとの考え方になりました。今までは本人の意向よりも公的に保護していました。ただ、こうなると、痴呆等になった場合は自分で選べないし契約できません。判断能力が落ちた場合どうすると言う問題がでてきます。そこで、民法を改正して援助する制度が始まっています。
 直接、サービスが公的責任で提供されなくなりました。今までは施設も選べませんでしたが、自分の意志で選択して利用できる点ではよくなりました。
 介護保険制度の狙いは、第一番目に老後の最大の不安要因である介護を国民みんなで支える仕組みを創設することです。介護を社会的な問題として捉えようとするものでこれをハッキリ打ちだしました。以前は家族で介護をするのが当たり前の考えで、介護を社会問題として援助していこうとするのは、非常に新しい画期的のものです。
 また、第二番目の社会保険方式により給付と負担の関係を明確にし、国民の理解を得られやすい仕組みを創設することです。保険でやることには賛否両論がありました。国民健康保険の二の舞いになると地方自治体は反対が強かった。実際はどうか分かりませんが、保険料を負担していることで、税金でやるよりもコスト意識がでると言われています。サービスに対する不満も言えることは理解も得られやすいことなのかも知れません。
 第三番目に、現在の縦割りの制度を再編成し、利用者の選択により、多様な主体から保険医療サービス・福祉サービスを総合的に受けられる仕組みを創設することです。これは在宅が中心になると訪問看護の看護師が月曜日にきてホームヘルパーも月曜日にきて、後は誰もこないと言うことのないように、調整する必要があります。在宅を中心にするようになった段階から保険、医療、福祉の調整が重要でした。総合的に受けられるようにしようということで、ケアマネージメントと言うもので、サービスの計画をつくるケアマネージャーを置きました。総合的に担当する人を置いて、援助の計画をつくって、みんなが調整をして援助する仕組みを入れました。
 四番目は、介護を医療保険から切り離し、社会保障構造改革の皮切となる制度を創設することです。医療保険の財政悪化を何とかしなければならないのが大きな問題でした。医療保険から長期入院を切り離して介護にもってきて、介護は福祉と社会的入院と言われる部分を合わせて対応していきたいと言うのが狙いでした。
 保険料を誰が払うかが問題になります。聞いてる範囲では、20歳代は国民健康保険にも入っていない人が多いです。介護も20歳代では自分の問題として捉えるのは難しいかも知れません。40歳代になると関心がでてきて健康保険を払っている割合が高いと言うことで、40歳以上になるのかと思います。老人保険法でも健康づくりを40歳以上を対象にしていたので、40歳以上65歳未満を被保険者とした制度となりました。
 サービスを受けるのは市町村に要介護認定の申請をしなければなりません。65歳以上の人にきている介護保険証をつけて申請をします。そうすると、市町村で要介護認定の調査をします。要介護の1から5、それに入らないと自立となります。コンピュータを利用して第一次判定をまず出して、それから医師や介護関係、学識経験者5人程度で構成される介護認定審査会でもう一度検討をします。介護申請者は主治医の意見書もつけます。主治医がいないときは市町村が選んで医者をつけて意見書を書いてもらいます。
 コンピュータのデータ、医者の意見書、それと調査をした人が特記事項があればそれを合わせて二次判定をして要介護が決定されて、保険所の方で記入して市町村から本人に返されます。サービスを利用する時は利用方法にのっとってサービスを受けることになります。

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