第26回
2001.12.3 シャトレー・イン横浜
東海大学政治経済学部
教授 首藤 信彦 先生


 

「なぜテロがおきるのか。
 テレビでは話せないテロ問題について」

 

 テロの問題について、この機会だから、テレビで話せないことを話そうと思う。今回のテロを日本では「9月11日米国同時多発テロ」と言っているが、英語ではSeptember 11(セプテンバーイレブン)と言っている。テロとも何にも言わなくても、9,11(きゅういちいち)これで全てわかる。会話等にこれが出てきたら12,24はクリスマス、1,1は元旦と同じように米国では受けとめられいる。これくらい米国社会に巨大なショックを与えた。我々の受けたショックの認識は米国からみたら何分の1かで非常に小さい。それだけ米国のショックは大きいことを知っておいてもらいたい。

 テロは、たくさんの命を奪うことが目的ではなくて、たくさんの人にメッセージを伝えることにある。ひどいことをすることは、「もっとひどいことが私たちに対し行われて苦しんでいるんだ」ということ伝える、これがテロの目的だ。IRA(アイルランド共和国軍)などはロンドンのデパートなどで爆発テロを行っている。

 数十年間にわたって行われているテロは、全ての犠牲者を集めても3千人くらいだ。しょっちゅうテロが行われているようだが以外と死者は少ない。しかし、今回のテロでは大きなビルが二棟も自ら崩れていった。大きなショックだった。当初死者は6千人から8千人と言われた。こんなに殺されたわけだから戦争になってしまう。紛争と戦争の違いは、5千人を超えると、だいたいが戦争と言われる。ブッシュ大統領が「戦争だ」と言って乗り出していったのも分からないわけではない。

 最近の怖さは事件が起こった瞬間から情報が操作されることだ。当初の6千人の数を下方修正した。3千6百人とかになった。最初の数字は2千7百人くらいと言われていた。地域紛争と戦争の境を考えると、最初から2千7百人と言われたら誰しもアフガンをこんなにまで「空爆しろ」とは思わなかった。

 一人の名前が二重にも三重にも重なっていた。これで犠牲者の数が多くなった。しかし、これは嘘だ。我々も例えば年賀状を出すときなど、住所録を検索するとダブった人は排除する。ちょっとしたソフトを使えば同一人物がすぐわかるはずだ。

 つまり、かなり早い段階から情報操作が行われたということだ。一番早い情報操作は「踊るパレスチナのおばさん」と言われるものだ。今回、二機目がセンタービルに突っ込んで始めてテロと分かる。中東のテロリストではないか、オサマ・ビンラディンではないか。米国で9時40分頃に爆発があって、11時〜12時くらいにこれがテロと確定する。アラブのテロならパレスチナ問題がある。

 米国では昼間「僕の同僚があのビルにいる、私の家族が下敷きになった」と泣き叫んでいる時に、片方では同じ昼の熱い日差しの中でパレスチナのおばさんが喜んでいる映像が流れる。「踊るおばさん」は、実は嘘の情報で1991年の湾岸戦争の時のものであったことがすぐにバレる。パレスチナの人たちは抑圧されて苦しいかも知れないが、しかし罪のない人の不幸を喜んではいけないと、思う気持ちに誰しもがなってしまう。

 これはよく考えてみればすぐ分かることだ。米国で午前中に起こったことや、おばさんの姿がリアルタイムで画面に表れる。ニューヨークとパレスチナには時差がある。パレスチナは夜である。このように最初から昔の映像を流して情報操作をする。米国民は「イスラエルを支援しているからテロが起きる」とは口が裂けても言わないが、心の中には物凄い潜在意識がある。実は、これを中和するために「踊るおばさん」の極端な例を見せたりしている。

 これがなぜバレたか。それはインターネットによるものだ。「踊るおばさん」の映像が流れると、ヨーロッパ側などから、あれは前に見たことがあると指摘されてしまう。このように物凄い情報操作が行われている。

 湾岸戦争時との大きな違いはインターネットの存在だ。当時はCNNだけが情報を流した。今はアルジャジーラと言うカタールの小さな衛星局がビンラディンの違う面の情報を流す。CNNなら絶対に流さないビンラディンの情報を独占的に流した。

 途中から社長命令で空爆で傷ついたアフガニスタンの映像やビンラディンは出てこなくなった。しかし、アルジャジーラの情報を他のメディア、例えばスカイパーフェクトなどが買っている。これくらいに、湾岸戦争時とは比べものにならないくらい違う情報が入ってくる。

 ビンラディンはアルジャジーラを通していろいろなメッセージを送ってくる。「今回のテロで米国は苦しんでいるだろう。それなら広島や長崎の原爆はどうなんだ」と言うと、これに拍手を送って賛同する人がでる。情報とは難しいものだとつくづく感じた。

第26回講演2(2ページへつづく)