第22回講演(4/5ページ)

 

 来年の参院選は重要になってきますが、仮に有権者を納得させ、選択させるような政策を立案できたとの仮定のもとですが、そうすると自民党が割れるでしょう。
 一例を挙げると自民党が依然として利益誘導型の選挙を展開しました。バラマキ政治も継続しました。竹下島根2区は典型的な日本の縮図のような選挙でした。青木官房長官が乗り込んでいって、5000億円をつぎ込むんだとか言っていました。民主党はそれに対して公共事業のどこがいけないんだと明示したのでしょうか。確かにバラマキ政治はよくない。公共事業は無駄が多いと指摘しました。公共事業コントロール法案を用意しました。しかし、公共事業はこうあるべきだというのを提示していません。このように有権者は見ています。
 公共政策は絶対に必要だと思います。ただ、今までやってきた自民党の公共事業は無駄が多いと言うことです。100兆円をつぎ込んでもせいぜい2兆円か3兆円の効果しかないとの試算が出ています。それが現在では645兆円という借金国になってしまっています。先進国の中でダントツです。国民総生産(GDP)に対してせいぜい40%までです。そうすると日本は現在500兆円だから200兆円までが許容範囲でしょう。それが3倍以上あることになるのです。
 選挙後にあまりに批判が大きいので、自民党は233の公共事業の見直しを発表しました。これはあまりにも唐突です。いったい公共事業は何であるかを全く考えていない。もし、自民党が見直しを本気でやるのであれば選挙前にやっているはずで、今度の見直しの基準も合理性がありません。
 5年で着工しないのは駄目と言うがなぜ5年なのか、7年ではいけないのか。今回の選挙で民主党が自民党の公共事業を攻撃するようなキャンペーンを展開していましたが、自民党の対抗軸を示せたなら自民党が負ける可能性が大きくなったでしょう。負ければ自民党はアメーバのような存在で、どういう形の再編になるか。それは中曽根さんが示しているような再編ではないかと思います。 最近出版した本によると、社会・共産を除いて全部丸呑みになっています。小沢一郎さんとも通じているようですが、この時民主党はどう動くか、主体性が問われてくると思います。有権者の6割近くが民主党を自民党と同じと見ています。
 再編に民主党を除くかと言うことになりますが、もう一つは民主党を中心とした再編があり得るだろうと思います。民主党がどういう政党になるかが近未来を見る時に大きなポイントとなってきます。民主党は未だできたばかりで組織的にも政策的にもしっかりしていません。四つの政党が一緒になってできた政党でもあるし、今回の選挙でだいぶ払拭されたとは言え、憲法問題一つ見てもまだ距離があります。これを克服して自民党の対抗軸になることが期待されます。 
 鳩山さんのNHKのインタビューで気になったのは今回の選挙で政権を獲得するためのステップを確保したと言っていることです。そして次の参院選で自民党を敗北に追い込む。さらに衆院選を勝ち取って政権奪取だと言っています。これは根拠が見えてきません。捕らぬ狸の皮算用です。数の上でステップを確保したのは確かですが、どんな政権でどんな政策を展開するかの理念が見えないし、理解されていないと思います。
 民主党のイデオロギーはニューリベラルだと言っています。鳩山さんは英国のサッチャー・プラス・ブレアだと言っています。概略はわかるが、1億の有権者はこれではあまり理解できないでしょう。
 サッチャーは新保守主義のもとにマクロ経済では自由市場原理を最大限重視して様々な政策を展開しました。その根底には効率性がありました。相当な反発がありましたがサッチャー革命は一定の成功をおさめました。そのアンチテーゼとして出てきたのがブレアです。彼は新社民主義です。マクロ経済の市場原理を尊重する点はサッチャーと同じですが、自由よりも平等を重視しています。ただ、オールドレイバーとは違います。ニューレイバーはそういう傾向を持っています。
 ブレアの哲学はサッチャーの効率性に対して公平性を重要視しました。それで民主党のニューリベラルを理解しようとすれば効率性と公平性の両方を確保していかなくてはなりません。果たしてこれが可能なのかです。サッチャーの効率性とブレアの公平性、これに代わる革新的な理念が鳩山さんにあるかと言うことです。これが最大のポイントだと思います。
 民主党は自民党との相違をどのように出していくか。鳩山さんは「自立した個人を大事にする政党にしていきたい」と表現しています。

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