第22回講演(3/5ページ)
比例区では党首のイメージと業績が結びついて票になります。日本では業績評価システムの影響度の分析や党首イメージの調査は進んでいませんが、この影響は間違いなくあります。小選挙区ではそれに加えて自民党の場合、候補者の評価と公明党の支援が候補者への投票というメカニズムになりました。
自民党が55年体制を築き上げてきた後援会組織がありますが、与謝野は駄目だが自民党はいいと言う票が非常に多い。個人党と言う選挙組織があるのでなかなか決め難い面もありますが、都市部ではこれが崩れてきています。
森さんが自民党の総裁を続ける。そして対抗馬の民主党は鳩山さんが無投票で当選することになりました。今後、鳩山イメージが出てくると思います。英国では党首のイメージが大きく左右するし、世論調査が必ず実施されます。97年5月総選挙で労働党が勝利した時の数字は、首相としてのふさわしさは当時の労働党のブレアであるか、それとも保守党のメージャーであるかを見ると、ブレアが37%でメージャーが27%でした。あるいはリーダーシップの効果性はブレアが64%、メージャーが37%。あるいは国民の統合能力はどちらがあるか。ブレアが56%、メージャーは33%となっています。これが非常に大きく作用をしています。
今回の選挙で無党派層の投票が大きく影響しています。出口調査で自民党に34%、民主党が15%、公明党4%、そして無党派が23%となっています。23%の内訳は三与党に対して23%となっています。その内自民党に15%が流れ、民主党には37%が流れています。都市部で3・3%投票率が上がっていますが自民党は7%減少しています。無党派層が投票率を上げていますが、自民党の都市部での敗北の原因は非自民の無党派層が握っていました。そして公明党効果を見ると公明票が自民党候補者に60%流れた時には自民党の36人が落選しているであろう、80%の場合は46人が落ちているであろうとのシュミレーション結果が出ています。中間をとれば40人くらいが減っています。与党三党で271ですが、もしこれが逆転すれば完全に三党は半数割れになります。その意味でも公明党がキャスティングボードを握ったと言えるし、今後もそうだと思います。
慶応大学の小林教授は、都市部において自民党を助けたのは公明票であると分析しています。公明党候補への自民党の支持は27%しか流れていません。自民党候補への公明党支持者は60%から70%が流れています。自民党候補のいなかった選挙区では公明党以外の候補者が当選する。つまり自民党支持者は公明党候補に投票しないということになります。公明党候補がいて自民党候補がいない選挙区では自民支持者は39%が公明党以外の候補者に投票しています。そして34%が棄権をしています。その典型が東京4区の森田健作候補の当選です。
公明党支持の76%が連立政権をよしとしています。自民の58%が駄目だと言っています。民主党が都市部で大活躍しました。これはいわゆる親民主党の票ではなくて反自民党の票が民主党に流れていったのです。全体から見ると公明党が協力したと言っても233と127だから民主党の議席の方が半数を超えているのです。これは55体制の自民党と社会党を思いだします。民主党がかつての社会党になってしまう。
確かに民主党は野党第一党で自民党に対抗しうる抵抗弁にはなりますが、それで終わってしまっては何にもなりません。その点を民主党は今後テコ入れをしていくか、支持者を増やしていくか、この点にかかっているでしょう。実際に選挙当時の民主党評価は政権担当能力があるかの調査では9%しかありません。期待できるかは17%。自民党と同じが58%。とりわけ無党派層では自民党に代わり得るかは7%しかないのです。選挙前のこの数字からみると、選挙後は分かりませんがこの辺に問題がありそうです。
選挙の結果を見てくると、現在の状況が続く限り次の参院選は自民党が大勝することは間違いないでしょう。逆に民主党が与党三党を過半数割れさせることができるでしょうか。これは一手に民主党のあり方にかかっています。それはいかに明確な政策を打ち出せるかです。もし一年の間に盛んに問題になっている公共事業、景気対策、財政改革を積極的にポリシーとして有権者に提示できれば自民党大敗の可能性が出てきます。
言い換えれば公明がどう出てくるか、反自民の傾向のある無党派層がどう出てくるかにかかっています。民主党が期待された結果になると、政界再編の可能性が大きくなります。どのような形で再編を行うかが日本の近未来の政治を考える上でキィーポイントになってくるはずです。
第22回講演(4ページへつづく)
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