第22回講演(2/5ページ)

 

 今回の衆院選は小選挙区が300、比例が20減って180議席になりました。この中で自民党は233議席を取り、民主党は127議席を獲得しました。
 投票率は62・49%、これを低いと見るか高いとみるかですが、これは戦後2番目に低い投票数字です。96年の選挙はもっと低かったのですが、投票時間の延長や森首相の「寝ていて欲しい」発言が夕方以降、無党派層の足を運ばせたことが推測されます。特に都市部で3・3%の上昇を見せました。英国で97年の総選挙で労働党が18年ぶりに政権についた時には77%でした。しかし、これが低いと言われ、それと対比して62%が高いか低いかと言うことですが非常に由々しき問題です。これによって自民党が救われた面があります。
 今、有権者が約1億と考えればいいでしょう。この有権者の一票の値段はいくらなのか。国家予算との関連でみると一票70万円という計算がでてきます。これを放棄するかしないか、納税者意識の問題です。
 今度の選挙の結果、一票の格差は人口の1番少ない島根3区を1とした場合、一票が1番軽い選挙区は神奈川7区で2.49倍となっています。2番目が神奈川14区でした。これも大きな問題で是正されるべきです。
 ここ何年かのおおまかな政党支持率を見ると、自民党は30%弱、全員が投票すると3000万票ということになります。これが60%そこそこだと1800万票になります。民主党を含めた自民党以外の政党支持者は約25%。無党派層は45%と言うことになります。これを前提に見ていくと、自民党は271を233に38議席減らしました。与党全体で見ると保守党、公明党が共に減らしており、連立与党は65議席減らしたことになります。逆に民主党は32議席を増やしています。野党全体では46議席増やして209となりました。これはあくまでも議席の結果であって、マックスウェーバーが言うように「結果が全て」と言うことかも知れませんが、しかし政局を占い予測する場合、単なる議席の獲得数だけでは分かりません。言い換えれば国民の意思は議席の結果ではなく、得票率に現われていると言うべきです。
 議席の数は、ある政党が何%得票したか選挙制度のメカニズムを通して議席に変換された結果でしかありません。だから議席数だけで評価すべきではありません。この意味でも選挙制度がどうあるべきかは非常に重要な問題だと思います。
 世界で完ぺきに国民の意思(得票率)を議席に反映させるような選挙制度は一つもありません。英国は極端で、非常に低い得票率で議席を獲得する例が度々あります。自民党は小選挙区、比例と併せて得票率41%、議席は全体の59%取りました。従って約40%で60%を取ったことになります。民主党は得票率が28%で議席は27%、民主党の場合は得票率と議席の数がほぼイコールになっています。
 民主党に投票した人々の意志は議席に現われています。この二つの政党を除いた他の政党は27%の得票率で9%しか議席の獲得数がありません。この結果、自民党に有利、あるいは大政党に有利な選挙制度になっていることが分かります。
 英国の例ではこの前の選挙で労働党が地滑り的な大勝利をおさめました。それでも得票率はせいぜい40%未満。議席では70%を獲得する、そういうようなアンバランスが生じています。日本で小選挙区をやめ、比例だけにしたら別ですが、小選挙区制だけにしたら同じような結果になる可能性があります。
 来年の参院選を目指して自民党と公明党が選挙制度を変える気配がしてきました。比例を拘束名簿から非拘束制へ持っていった方が有利に働きます。これは今後どうなるか分かりません。

 そこで一つの評価として自民党、連立与党は勝利したのかですが、特に自民党は信任されたと評価しています。ところが新聞によって評価が違っています。朝日新聞では「首相信任とは言えない」との評価を下しています。日経も「変化を望まなかった有権者、とりあえず今を守る」と、厳しい評価を下しています。
 勝ったか負けたかの評価は非常に難しいです。選挙前が271議席ありました。それが233と大幅に議席を減らした点では負けていますが、96年の選挙では自民党は239議席でした。その後無所属議員とか新進党をやめた議員が自民党に移って271議席になりました。このことで、ある学者は小選挙区で負けていないとの評価を下しています。
 96年、自民党は小選挙区で38・6%の得票率で169議席を確保しました。比例では32・8%で70議席を確保しました。今回は小選挙区で得票率41%、177議席を獲得しています。比例は23・8%で56議席となっています。小選挙区だけで見るとむしろ大健闘しています。大幅に減らしたのは比例区の結果です。ここに、公明党の役割がクローズアップされてきます。比例区の結果、むしろ自民党に対する評価は小選挙区の結果です。41%を確保し、177議席を取ったと言いますが、公明党の票がなけれがこんなには増えなかったでしょう。公明党はだいたい800万の固定票があります。今回は6割から7割が投票しています。

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