第19回講演(5/6ページ)

 

●ドイツに学ぶ国際競争力の強さ
 ドイツの例ですが、シュタインバイス財団が中小企業育成の力を注いでいます。ドイツの南西部のバーデン・ベルテンベルク州というところがあります。州都がシュツットガルトというドイツ国内で最も貧乏なところだったんです。バーデンとベルテンベルクが合体した州です。アメリカにドイツ系の移民が多いんです。殆どがこの貧乏な州からアメリカに出て行かざるを得なかった人が多いんです。私の家内もここの出身です。いまだに食べるものが粗末です。この州がたくさんの出稼ぎドイツ人を出したんです。現在はどうかというと大企業はダイムラー・ベンツ、ボッシュ、ポルシェという程度で、95パーセントから96パーセントが中小零細で成り立っている州です。さらに機械工作、製造業を中心とした中小企業はGDPの20パーセント以上を占めています。非常に優秀な中小企業の原点が活躍している州なんです。
 これだけの国際競争力をどうやって持ってきたかというと、州政府が持っている中小企業省という独立した省があるからなんです。これを導入し、急速に業績を上げています。この州と神奈川県は姉妹提携を結んでいます。

 シュタインバイス財団は政府直下の財団として立ち上げられました。建物は国立大学、運営は州立という複雑なのがドイツの大学なんですが、そこの先生方をノミネートして中小企業が自立して研究開発できないかということで、先生方にお願いをしています。「どうぞ、州の大学の施設を使ってください。何の制限もつけません」と言って、問題を解決したら先生に代償を払うシステムをつくってしまったんです。その結果、この財団の先生方は増えて、私の知っているケルンの航空宇宙研究所、シャトルなどのアメリカの研究もやっているところですが、そこの所長を含め、かなりの先生は職員を兼任しています。
 ここの特長は国立大学研究所の研究者、職員をシュタインバイス財団の研究者に登録して、中小企業の抱える問題を解決させています。こういう産学連携形態をとっています。
 企業はこの財団に契約金を払って問題を解決して貰っています。あくまでも結果重視です。大学研究所の施設を問題解決に使用してもいいという背景には、国がやっていることはいいんだという考え方になったんでしょう。研究者には臨時収入が入る。これは非常にいいインセンティブになっているんです。
 ドイツではこのようは形で中小企業の育成を高めるということで、一流クラスの研究所、大学に、研究者が働いています。契約期間、経費を明確にしています。国立大学の研究員は兼業ができるんです。今、兼業は日本国内でも問題視されています。私も通産省で大学の連携について2時間ほど話しました。そうすると、日本の国家公務員の場合は103条、104条があって、会社の社長、役員でなければ兼業はできるんです。だから、国立大学の先生もできる。文部省のパンフレットにも兼業許可をとればできると書いてあるんです。ただ、大学の先生が自ら経営者になってベンチャーを起こす場合はどうなるのかな、というような引っ掛かる場合もありますので、この辺は通産、文部省と調整して貰わなければいけないところがあります。秋頃には人事院も含めて、検討結果が出てくるというような話しも聞いています。

 

●規制緩和が日本の競争力をつける
 大事なことはやる気を起こさせるということです。個人収入を得ることはドイツでも効果がありました。日本でも効果があるだろうと思っています。ドイツ国内には400ケ所のセンターがあります。東海大はシュタインバイス財団と連携したわけですが、日本の市場に合わせた形でやっていきたいと思っています。
 国際産学連携ネットワークは響きはいいんですが、裏を見て頂きたいということです。飛行機でいうと、今、着陸の順番を待っているような感があります。シュタインバイス財団だけではありません。ドイツの応用開発研究財団のフランフォーバイス財団も上陸を狙って市場調査に入っています。その他アメリカ系、イギリス系が上陸しようとしています。東海大にもそういう話しを徐々に仕掛けてきています。
 彼らは日本のマーケットを狙っています。「会社の問題を自分達のところで解決してあげましょう、その分、お金をください」とドンドンいいところを持っていかれようとしています。非常に活発である現状を是非分かって頂ければと思います。
 政府としては、規制緩和を示してほしいと思います。日本も早く緩和しないと国際競争力に負けてしまいます。この辺、通産省は物凄い危機感を抱いています。

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