第19回講演(4/6ページ)

 

●産学連携のポイントをしっかり把握すること
 企業の広報活動も一緒にやっていますが、学会発表は秘密保持契約を結びます。これを第一優先にします。情報公開制度はそれでやります。企業には大事な部分の特許を取って頂いた上で、学会発表なり報告書を出しますが、前段階では一切公表はしません。企業と大学の保持契約でズーッとカバーしています。
 立命館大は「こういう企業といくらの契約をしました」ということを、全部、大学の年報に発表しています。これをやると、例えばAという会社が何をやろうとするかが全部見えてしまうんです。ですから、東海大では、誰から言われようと一切出しません。
 ここは企業の抱えている問題を完全に秘密を保持しながら、特許を取得した時、思いっきり学会発表なり新聞発表をします。こういうやり方をしないと産学連携などできません。大学には税制問題、経営者の気持ちなど、分からない教員がたくさんいます。ですから私達が中に入って契約、見積書を作成させて頂いています。

 大学との関わりあいは国立、公立、私立で違います。注意しておいてください。東海大は松前達郎理事長名で契約しています。これは経営の責任者としてですが、いいかげんな大学は教授名、よくて学部名なんていうのもあります。これですと、法的な拘束力はありません。万一、大学の先生がこれを論文として提出しても訴えようがありません。大学の誰が契約の相手なのか、はっきりとしておかなくてはなりません。
 責任ある問題解決と信頼ある相互関係の確立。これがなければ契約件数を伸ばし「是非一緒にやっていきましょう」なんて言うことはできません。
 以上が産学連携に対して、母校を使ってください、というポイントです。

 

●技術が高い日本の中小企業
 ドイツの自動車クラブが毎年、各メーカーの自動車を製造年月日別に、アウトバーンで立ち往生していまった車を統計値で全部出しています。どこが弱かったかもデータとして公表しています。
 商工ジャーナルに、98年度の発表データに製造後4年から6年経過した車がドイツ国内で立ち往生し、牽引した頻度が出ています。頻度が多ければ多いほど質が悪い車です。悪い方は、フィアット、ルノー、シトロエン、オペル、フォルクスワーゲンです。いい方はマツダ、トヨタ、日産、本田が牽引回数1,000台中、8.4台です。ところがヨーロッパ勢でみると、13台から33台です。93年、94年と古くなると頻度は上がってきますが日本車に比べて欧州勢は多いんです。故障頻度が際だって高いんです。
 このデータから何を見るかというと、日本の自動車産業はピラミッド構造になっていて、1台に約3万点の部品が使用されています。その部品の一つでも壊れれば大変です。これを維持できているのは下請けの中小零細企業の技術が高いからなんです。だからこそ、日本車の質が高いんです。
 自動車産業を支えているピラミッド型の中層から下層に中小零細企業の技術の高さがあることがデータから分かります。フォルクスワーゲンなんかは故障率が結構高いんです。1970年代からのデータを見るとほぼこの傾向は変わっていません。翌年度のデータではBMWの7シリーズがよくなって出ていますが、相変わらず日本車が上位を占めています。

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