第19回講演(3/6ページ)
●大学と企業の一体化で無駄な経費を削減
大手企業からの脱出、下請け専門企業からの脱出は神奈川だと日産のケースがあります。潰れたところも出ています。技術開発力をしっかり持っているか、いい人材を確保しているか、この二つに多分集約されると思うんです。これを何処でやるかという時に「大学を利用してください」ということです。
人材育成は研修員制度で十分にできます。調査研究室の指導もします。授業を受けたければ「それもどうぞ」ということです。無駄なお金を使わずに、研究投資効果が図れるということです。では、どのくらい掛かるのか。これはケースバイケースですが、研究開発には一人、よくて二人です。「そんな余裕はありません」と言うところもあります。しかし、何も知らない人間にも300万円以上投資するんです。学生にもよく言うんです。「君達、学校出ていくら貰うか。こっちは19万、あっちは20万とか言うが何を生み出すんだ」と。自分達は19万、20万と、そんなことばかり気にしているんです。つまり、役立たずでも300万円以上は払わないといけないんです。
実験、研究開発費は高すぎます。大学を利用する場合、委託研究費でやるか寄付金でやるか、これには免税措置が200万円まであります。どちらでもいいんですが、100社相談に来られたら100通りの対応があります。
メリットとしては人件費を削り、大学の研究用資産を運用できる点です。何億もするような装置も抱えています。それを研究開発だけに使わず、企業の委託研究に使って頂きたいと思います。
技術指導、ノウハウも何年も積み重ねてきた知識を持って、何とか手助けできるところはしたい。こんな前向きな姿勢でいます。
また、企業の了解があれば大学名と一緒にして学会発表、新聞発表もさせて頂いています。広報宣伝も企業にとって大切です。ちゃんとやらせて頂いています。
●大学は公費負担などの情報の源
今日は、是非母校を利用して頂きたいと、お話ししています。実施する上での産・学・官の三つについてお話しします。
産業界は私から言わせれば、大手ほど菓子折り一つで来て、いろいろ質問するんです。大学としては知らないのは悔しいですから、20年、30年やった研究成果を何でも言ってしまうんです。「すごいだろう」と。これが間違いです。日本の企業も慣れていますから「あそこの先生に菓子折り一つ持っていって教えて貰おう」なんです。これがアメリカとの大きな違いです。知的財産の価値が分かってないのが日本企業の現状でもあります。「これだけ経費が掛かります。問題をサポートしましょう」と言ってそして対価として払って頂けるものは払って頂こうというものです。
ある石油会社は、散々話しを聞いて菓子折り一つです。これなどは大企業の典型です。こんなことは山ほどあります。ですから「しゃべるな」と言ってあります。しかし、東海大のあの先生は何も知らないと言われると悔しくて、ジレンマに陥っています。
なかなかアメリカとは、たち打ちできません。マサチューセッツ工科大では教授と1時間話して100ドル以上です。公費負担をあてにするにはどうしたらいいか、中小企業は解決したい問題がたくさんあります。相談に行く相手はお役人ですから、民間企業の社員を経験をした人は殆どいません。研究開発の経験もまずありません。現場の経験がない彼らは、しかし、制作を立案し、実施し、産業育成を図りたい気持ちはあるんです。県の職員も市の職員もそうです。相談に行ってもこの点を頭に入れて、100パーセント鵜呑みにしないよう十分注意することです。
いい情報を引き出すくらいのつもりで役人とは付き合うべきです。私は神奈川県庁に行って話しをしています。お役人も「そうだ」と言ってうなづいています。省庁も県も縦割り制度があります。神奈川だけでも30くらいの中小企業育成何々というものがあるんですが、何処へ行けばいいのか誰にも分からないんです。そして、商工部へ行っても、他の部所は知らないと、こんなもんです。こんなことではいくら税金をつぎ込んで中小企業育成なんて言っても絵に描いた餅にしかすぎません。
何処かがやらないといけないだろうと言うことで、私達もいろいろ情報を集めながら、ネットワークを拡げています。多少なり大学に情報が集まっていますので、活用して頂けたらと思います。
知的財産は企業が使いやすいように配慮する。つまり特許ですが、県とか国から資金を貰ってやると特許の半分をよこせというのが今までの主張です。最近は幾分か緩和されています。この辺は注意しないと自社の将来の発展にいい時に、県、国が半分ということになります。この辺も出し方のコツがあります。ノウハウもありますので相談してください。
一般の方々は「東海大は何か、だだっ広くて何処に行ったらいいんですか」と聞かれます。これには私達も気がつきませんでした。言われて初めて分かりました。大学の教員は社会に出たくないヘソ曲りが多いことも事実です。企業が教員を指名してくることもありますが、私達は企業から相談を受けたら「この話しはこの教員の方がいい」と判断するケースがたくさんあります。
インターネットで調べてきても、ようは人間対人間なんです。お見合いと同じで、これならいけると判断した時に、私達が中に入って契約を進めていきます。
私達も注意していますが、仕事を進めていく上でどうしてもソリが合わないケースも出てくるんです。こういう時は大学教員に一般常識がないのが多いと思ってください。これは東海大だけが例外ではありません。
第19回講演(4ページへつづく)
|