第16回講演(2/8ページ)

 

●政治レベルで英・米から学ぶこと
 現在の日本を取り巻く現状は、内外共に色々なことが起こっています。例えば4月から5月にかけてのインド・パキスタンの核実験、これは大変なアナクロリズムだろうと考えます。これに対してどう対応するか、あるいはイン・パの核実験をどのようなメッセージとして受け止めるか、これは日本の外交政策の中で非常に大きな意味を持ってきています。
 あるいはコソボ、旧ユーゴの民族紛争だとか、東ティモールの民族紛争などがありますが、もう一つの大きな出来事は日中国交を回復する直前に、当時のキッシンジャーが日本を飛び越えて中国に渡ったことがあります。
 当時の田中内閣ですが、田中角栄が外交史で名を残したのはこの日中国交の一点だけと言われています。この時も実はアメリカが主導していました。これを考えると、今度クリントンが日本を飛び越えて中国へ飛んで、そして江沢民と色々議論をしました。このメッセージは新聞で報道された以上に深刻に受け止めるべきだろうと考えています。特にアジア経済を考える場合はこのメッセージをどう受け止めるか、これは現在の政財界の首脳の方々の力量が問われていると考えています。 しかし国内では金融が破綻をし、さまざまなところに影響し失業率も4・1%、300万人になろうとしています。ところが実際の統計を見ると、この数字は平均ですから20歳から24歳の失業率は8%をこえている状況です。
 東海大の文科系の就職は大変苦戦をしています。数字をどう読むかもありますが、大学新卒者の苦戦の現実は4・1%では表せない深刻な問題です。経済をどう立て直すか、そしてそれをさまざまなアイデアで立て直そうということですが、うまくいきそうもありません。
 もう一つ、その立て直しにブリッジバンク構想が決定しました。ところが、これもうまくいくかどうか、私も判断できません。しかし、一つ言えることは、このブリッジバンク構想が日本で構想されたアイデアではないと言うことです。これはアメリカからの輸入です。つまり、経済の実態、あるいは官と民の関係なり、これがアメリカと日本とでは条件が違うというもとでブリッジバンク構想だけが導入されています。
 アメリカではそれなりにうまくいきました。しかし、官と民の関係が全く違います。従って示されたことは結構かも知れません。そして公的資金、即ち税金を30兆円遣うというのですが、うまくいくかは別問題と私は考えています。
 つまり、日本にはそういう、ある種の危機に対する対応がありません。アイデアがありません。今日の政治の混迷と間違いなく、あい通じていると考えています。

 

●参議院選挙が示唆するもの
 一番の関心は先日行なわれた参院選の結果です。そしてそれに連動した自民党総裁選のことです。自民党の総裁に誰がなるかは私にはあまり関心がありません。確かに急に3人が立候補し、旧派閥も壊れつつあるような感じがしていますが、決してそうではないとみています。結局別の形の今までと同じような自民党内の派閥抗争であろうと思います。やや、3人には改革に対する温度差がありますが、基本的には同じだと思います。中でも小泉さんが多少なりとも違ったニュアンスを持っていますが、あまり期待しません。それより重大なのは参院選の結果をどう読むか、これが一番大事なことだろうと思います。
 その流れからいうと、3人の候補者を立てた総裁選の中で、明確に参院選の民意が反映されたことを真摯に受け止めるはらば、早期に衆議院を解散をする。あるいは期限を切って10月までに解散するということを言える人は誰もいません。こういうことで、つまりあまり期待しないということなんです。これは参院選ですから政権交代はあり得ません。しかし、参院と言えども国家国民の意思が反映する場ですから、もし自民党橋本政権の経済政策を中心としたさまざまな政策業績に対する一つの判断だとするならば、当然、民意を問うのがルールです。少なくとも日本が民主制を採っているならばこれはルールです。このことを3人の候補者はだれ一人として認識していないと断ぜざるを得ないわけです。
 かりに衆院選を10月にやって、そして、それで再び自民党政権ができる、あるいは他の政党が連立であろうと何であろうと政権をとる。それはどちらでもかまわない。それが日本の政治の状況であろうと思います。そういう意味でこの参院選の結果をどう見るかが大事になってきます。
 この中で争点がないとよく言われました。確かに新聞で発表された程度のことですが、多少のニュアンスの違いがあっても対応は基本的には同じです。

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