第46回
2008.9.19(金) ホテル横浜ガーデン

東海大学政治経済学部教授
小林 逸太 先生

第46回講演(1/5ページ)

 

金融危機の勃発と日本経済
「苦悩の時代にどう対処するか」

 今日の話ですが、大分前に「低迷する日本景気について話して欲しい」ということでしたので、ちょうど良いと思っていましたら、とんでもないことがこの2、3日のうちに起こりました。「金融危機の勃発と日本経済」というタイトルに変えさせていただきました。ご理解いただければと思います。

 

 

<はじめに>

 私の専門は国際金融論を専門としているわけではありません。主として産業組織論と言って、産業活動を経済的に分析するものです。産業活動というのは、具体的にものを作る製造業などもありますし、サービス業もあります。サービス業の中には流通もありますので、そういったあらゆる、できれば広範な産業活動を一つ一つチェックしていくものです。チェックするには色々と方法がありますけれども、今お話した通り、経済学のセンスで見ていこうというのが私のずっと研究してきたことです。専門的に申しますと「ミクロ経済政策」と言いまして、財政問題や金融問題は「マクロ経済」です。私のほうはミクロと言いまして、一つ一つの企業活動、あるいはその寄せ集まりである産業活動を分析することです。
 簡単な例を挙げると、産業活動について個々の企業にとってはすごく良いことが、もしかしたら経済全体からするとあまり良いことではないかも知れないということがあれば、私どもの勉強はそれなりに役に立つということです。ですから、談合が行なわれたり、カルテルが行なわれたり、競争を阻害することが個々の業界でありますと、それは個々の企業は儲かりますが、経済全体からしますとあまり良い結果ではありません。そこで、私どものほうでは、例えば独占禁止政策のようなものを勉強して、公正で自由な競争がどうしたら実現するかという問題になっています。勉強する意味はそこにあります。こういう意味で、いつも企業レベルの、あるいは個人レベルの考え方ではなく、国民経済、あるいは社会全体からの経済活動の分析が大変大事になってきますので、当然金融問題も勉強しなくてはいけないことになっています。
 先程ご紹介いただきましたように、私は銀行にも勤めていたことがありますが、なかなか公平に社会を見る、経済を見るのは難しいものですし、いい加減な言い方をすれば答えのない勉強です。数学や物理あたりはキチンとした答えはありますし、答えがなければいけませんが、経済学、あるいは政治学といった社会科学ではなかなか答えが出てきません。そこに私どもの逃げ場と言っては失礼ですが、若干勉強していく理由があるなと思っています。
 前置きが少し長くなりました。今日の話ですが、日本経済の低迷の問題、これからどうなるかということ。それからもう一つは、ついこの間、表面化した金融危機です。金融危機のほうはグローバルな大きな影響がありますし、日本経済の低迷のほうは国内の問題ということになります。いずれの問題にしても簡単には答えは出てきませんけれども、できたらそのあたりの中で、元々こういうことが起こるんだということや、その起こる理由は何かを、少し頭の中で整理していただく。そしてこれからどうしたら良いのか、特に企業経営という立場からどのようなことを考えたら良いのかまで話ができたらと思っています。
 何度も言いますように私は金融の専門家でありませんし、それから私の主義として株をやっていません。そういったようなことは学者としてあまり良くないと思っていますのでやりませんけれども。しかし、正直言うと日本経済新聞を開けると何ページにも渡って株価の覧がありまして、これを毎朝捨てているのかと思うと大変もったいない気がします。私の友人にも株をやっている人間がいますけれども、株をやっていると情報が非常に入ってきます。ですから、大変大事なことなのです。研究者として株はあまり良くないと考えていますので、むしろ皆様のほうが現実の経済をご存じかなと思っています。
 今日は「かくあるべきである」というところまでしたいと思いますが、その点はご容赦願いたいと思っています。

第46回講演(2ページへつづく)