第45回講演(6/6ページ)
<質疑応答>
Q: 環境技術コンサルタントの下川です。
環境情報、例えば報告書、CSR(企業の社会的責任)リポートなど、また温暖化の問題にしても日本が排出している総量の半分は企業(150社)が占めていること、レジ袋をなくすだけでよいのかということなど、暮らしと環境ということから考えると、我々は何を知って、何を行動するか。
世界では一大抵抗勢力が日本だといわれているようですが、我々国民として何をするべきかという視点で補足していただけないか?
A: 日本が排出するCO2の量ですが、経済活動に対してのCO2排出量をいうものは世界でも最も少ない国のひとつです。ある経済活動単位、日本を「1」とした場合、アメリカはその何倍も出しているというところを我々はもっと知るべきであると思いますし、そのような議論をするところではもっと主張するべきだと思います。
よくいわれているのは京都議定書。あれを決めるときに会場が京都であったということ、どうしてもほかの国並みにやらなければいけなかったということですが、ヨーロッパと比べると、あるいはアメリカと比べると日本が先に進んでいた状態だった中で、同じような条件を課してしまったということは間違いだったのではないかと最近言われているようですけれども、そのあたりの情報を我々自身がしっかりと認識しなければいけないと思います。
しかし、経済活動、CO2はもっと減らしていかなければいけないのは間違いないのだろうとは思います。日本はもっと分散発電、エネルギーシステムを根本的に変えていくだけの可能性を持っていると思うのです。従来のシステムをどう変えていくのかということとなると企業間の既得権などの問題を変えていかなくてはいけない大変なことだと思いますが、このあたりのことを一番やっていかなければいけないことだと思っています。
先ほどプラスティックの袋の話が出ていましたが、これはよく袋を減らすということだけの議論になってしまいます。これも、スーパーの袋を減らせ、減らせというのですが、私はあれを持って帰りゴミ袋にしていますので、減らされたらゴミはどうするのかというと、ゴミ袋をまた買わなければならないということになります。
一つの側面だけで考えられない問題がたくさんあると思います。日本はドイツと比べるとゴミ出しの日というと、街角の電柱のところに袋を積んで、カラスや猫に突かれるとゴミが散ってしまうような、先進国には稀な光景が続いているわけですが、そこではスーパーの袋は重要な役割をしています。それを減らすということは、物を買った時の袋として考えるとまさに減らす対象になっていくと思うのですが、その後の利用がどのようなものかなど色々な問題を考えていかなければいけない問題だと思います。ですから、我々はもっと色々な方向からものを見ていくことが大事であろうと思います。
あるいは客観的に現状がどのように過去の流れの上においてきたのか、日本はどれだけ環境に対して取り組んできて、その結果今どういう状態にあるのかということを我々自身が認識して、それを主張していくということをやっていかなければいけないと思います。
ドイツへ行ったのが1983年ですが、行ってびっくりしたのは、1980年代最初の頃日本では鉛フリーのガソリンは当たり前でしたよね。しかし、ドイツではほとんど鉛入りなのです。それは国境を越えてフランス、チェコなど色々な車が入ってきていて、ドイツだけが規格を変えてしまうとガソリンが使えなくなってしまうということが背景にありました。政策が遅れたということもありますが、逆にその後のドイツの政策の転換は素早く、ごみのリサイクルシステムも含め、非常に早く取り社会を変化させていきました。
日本はある意味島国ですから、陸続きの国がありません。逆にいうと電力だって輸入できません。ドイツは原発を止めても、いざ足りなくなればフランスから輸入できます。日本は輸入できません。しかし、日本は島国だからこそ日本全体で取り組んでいけることがたくさんあるのでないかという気がします。
日本の置かれた現状、客観的な視点でものをみていくところをもっとみんなが大事していかなければいけないかなと思います。
−質疑応答終了−
この内容は2008年4月21日、ホテル横浜ガーデンで行われた講演を記録したものです。講演者の話の趣旨はなるべく忠実に伝えるように心掛けていますが、プロジェクターの使用により文章化するにあたり映像説明に限界があるなど、その性質上多少異なる場合もあります。尚、記事の掲載に誤りのある場合は講演内容を優先するものとし、お詫び申し上げます。
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