第42回
2007.4.26 ホテル横浜ガーデン

東海大学政治経済学部政治学科
主任教授 山内 和夫 先生

第42回講演(1/4ページ)

 

選挙でどう変わる
日本の政治、経済、そして格差社会
−統一地方選挙の結果から占う−

 紹介いただいた東海大学政治経済学部政治学科の山内和夫でございます。
私は東海大学政治経済学部政治学科の卒業です。

 政治経済学は1966年にスタートして、去年学部創設40周年を迎えた。
おかげさまで盛大に40周年行事が挙行されたが、何故盛大だったかというと、巨人軍の原監督がゲストとしてみえられて、われわれの総会にも出ていただいたからだ。
 原監督、学生証番号を覚えており、私は学生証番号「○○PP○○」と、そういう具合に学生の時の学生証番号は忘れがたい存在で、私も大学を卒業して30年経つが、「00PP1424」と、今でも覚えている。
 この「00」は70年の「00」だが、対外的には80年の「00」だと言って、サバを呼んでいる。大学というところは人生の中で、記憶の中に生きている、非常に重みを持っているんだなということをつくづく感じている。

 今回[選挙でどう変わる 日本の政治、経済、そして格差社会]という、まるで雲をつかむようなタイトルを頂いたわけだが、これをどうやってまとめようかと...。
 そこで、一寸舞台裏の話をするすと、蟹江先生から島先生、この講座で何回か講師をなさっておられるようだが、島先生に「誰か人はいないか」という打診があったらしい。それで、「このテーマだと山内がいいんじゃあないか」ということで、私に白羽の矢が立ったということのようだ。
 何故私ならいいだろうかということなんだが、それは東海大学の政治経済学部の特徴にも由来するということだ。

 経済というのは、何処と密接に関係するかというと、私は政治だと考えている。それは何故か、経済学という言葉は、昔は[Political Economy]といった。直訳すると「政治経済」だ。
 アダム・スミスという人がいる。アダム・スミスはもちろん経済でも取り扱うが、政治のほうでも、いわゆる神の見えざる手ということで有名なわけだが、当然、政治でも取り扱う。アダム・スミスが国を富まするためにはどういう風な政府のありよう、政治のありようについて述べているように、まさしく政治学の対象ということなのだ。それがだんだん時代が進んでくると、PoliticsとEconomicsに分離していくわけだが、当然政治をどう考えるか、これは位置づけの問題だが、社会的秩序の維持ということを考えれば、これは法学部、政治学科ということになるわけだが。

 いわゆる経済とリンクすると政治的決定をして経済的資源をどういう風に配分していくかということが、いわゆる政策決定とか意思決定という問題になるわけだが。そういうことになれば、当然政治の位置づけは政治経済学部政治学科だという風になる。

 もちろん、経済学と一緒だというと、それは単なるPoliticsというイメージのある言葉から、いわゆるPolitical Science 政治科学という言葉で表される。だから、本日のような日本の政治経済、格差社会というような問題でも出来るんじゃあないかと。
 ただし、本当にできるかどうかは、これは1時間ほど経って、皆様方の評価に耐えて初めて今日は成功であったかということになるわけなのだが。そういうことで、私が今日お話しすることになったと。
何故こういうお話をしたかというと、結局しゃべるのであれば、多少政治経済学部の宣伝もしなければいかんのかなぁと、どこかの宮崎県知事と同じように、大変な時代ほど、セールスマン的にいろいろなところで宣伝をして歩かなければいけないということだ。

 いままで、ここで講演された先生方をみても、いかに政治経済学部に在籍していた先生がお話になっているかということをみると、社会的ニーズは多分高いのだろうけれども、中々受験生が集まってこないし、仕事柄付属高校の進路説明会に行くと、「政経?人気ない。誰でも入れますよ」などということを言われているわけだが。そういうことだけは払拭したいと思っているしだいだ。

 本題に入る前に、今の日本の社会はどういった社会かなぁというところから若干整理をしてお話をしていきたいと思う。

 現時点での基礎データをみると、まず、日本は長寿社会に突入をしている。女性85歳、男性は今79歳といったところだが、女性のほうが長生きだ。女性はしぶといなぁと思わないでほしい。ちょうどそのころの年代、大正15年から昭和2年くらいの5年間は、戦争で兵隊にとられて亡くなった方がいる。どうしても男性のほうは平均寿命が少なくなって、もちろんその時代を超えれば多分男女とも同じような形になると思うが、そういった社会が実現しているということだ。

 それから、産業構造をみると既に第3次産業、とくにサービス産業になっている。これは、いわゆる製造業等の資本は海外へ移転しているということだ。
 例えば、洋服にしても、電化製品にしても、みんな労働者が安く確保できるところで作られて、日本へ持ってきて売られる社会になっていること。それから、学歴というと50%が高等教育を受ける時代、高学歴社会になっているということ。それから、収入と支出割合、それから労働時間数、そういったものからみると、かなり教養娯楽費、その他、教育費等の、本来、基本的に生活に関わる部分よりも余暇の部分に支出が向けられている。もちろん、それを支える実収入も増えている。

 それから、労働時間もだんだん短縮されている。現時点ではこのような社会の中で、私たちの大半は、わりと満足できる状態にあるということだ。言い換えれば、日本はまさに成熟社会にあるということだ。しかしながら、これがこのままずっと続けばいいんだが。

 成長社会から成熟社会になった。成熟したら次は衰えていくだろうと。大体こういうのが自然の流れということだ。それはどういったことで読み取れるか、人口減少と少子高齢社会の進行で、いわゆる[ing]になっている。かつては、もう[ed]で「なった」という形で、少子高齢社会という言葉を使っているわけだが、ところが、これは避けて通れないということになる。
 これを人口データでみていくと。2005年、平成17年に国勢調査を行ったときが1億2千777万、これが日本の総人口でピークだった。これが、ここから人口減少過程に突入する。そうすると2030年、あと10年一寸だが、そのときは1,200万ほど減って1億1千500万。そして2046年、約30年後は1億を割る。そして、約50年後の2055年には9,000万人を割る。こういう風に、どんどん人口が減っていく。
 もちろん、「40年後、50年後といったら私どもには関係ないからどうでもいいや」といっても、それは継続的に日本民族というのは続いていくわけで、こういう時代が予想される。

 1億を切るということは、約2,700万人がいなくなるということだ。今の人口分布でいって、北海道0人、青森0人、岩手0人、秋田0人、宮城0人、福島0人、栃木くらいまでは0になるかなと。現状でみると、それくらい大きな影響がある。

 これを年少人口0〜14歳、生産人口15〜64歳、老年人口65歳以上というかたちで詳しくみていくと。
 年少人口だが、例えば出生数、つまりその1年に生まれた数は、1973年(昭和48年)には209万あったのが、2005年の国勢調査では106万人まで半減している。そうすると、この106万人が18歳人口になる15年後は、東海大学はこの106万人を巡って争奪戦をしなければならない。
 もちろん、だんだん減ってくるから、もう大学は厳しい状況に見舞われているということは当然だが、地方の大学では定員割れがどんどん出ているという状況だ。しかしながら、早晩、こういう時代になればどう生き残りをかけるかという戦略を考えなければいけない。
今からでも遅くはないくらいに厳しい状況ということになる。

 将来の年少人口推計、これは出生高位、中位、低位という3段階に分けられるが、その中位という真ん中でとって、14歳以下は2009年には1,600万人台まで減少して、2039年には1,000万人を割って、2055年には750万規模。つまり、どんどん若い人たちがいなくなる。これを割合でみると、2005年には13.8%であったものが、2055年には8.4%になるということだ。
 それから、生産年齢人口はどうかというと、これは働いて税金を納める年齢ということになるが。15歳を、税金を納める年齢というのはおかしい。今は23歳というのが普通だ。それだって、アルバイトだとか、俗にいうフリーターだとかニートということになれば、統計上はこの年齢を生産年齢人口としてるが、税金を納めないから大分目減りをして考えなければいけない。

 1995年の国勢調査では8,716万、それが10年後の国勢調査では8,409万。どんどん減って2012年には8,000万を割って、2055年には5,000万を大きく切って、4,595万という推計になっている。
 これだけ人口が減るということは経済的にすごい大きな影響がでる。つまり、税収面でだ。それが反比例するように、65歳以上は2005年では2,576万人、それが2012年には3,000万人を上回り、2020年には3,590万。大体それくらいで推移をしていくということだが、全体の人口が減っていくわけだから、2013年がもう少しでやってくるが、そこで25・2%、4人に1人が65歳以上、2035年は3人に1人が65歳以上、2055年には2.5人に1人、40%以上が65歳人口だ。

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