第41回
2006.12.1 ホテル横浜ガーデン
東海大学医学部付属東京病院
病院長 桑平 一郎 先生

第41回講演(1/4ページ)

 

いつまでも若くいたい! 不老長寿は可能か?
老化の兆しをみつけ、心身の衰えを防ぐ予防医学
「アンチエージング(抗加齢)医学」を探る。

 桑平です。どうぞよろしく。これから、アンチエージング治療について話をさせていただくわけだが、この話を聞いたから、必ず長生きができるというわけではない。東京病院が始めた抗加齢ドックのこともお話するが、その前に抗加齢医学についての話をさせていただきたい。

 日本には100歳以上の人は何人くらいいると思うか。100歳以上は約3万人いる。今後、1年ごとに約1万人の割合で増加するとの予測がある。
 109歳を超えるのが難しいというデータがでている。いくらアンチエージングをやったとしても200年、300年生きられるわけはない。生物学的な限界はおそらく120から125歳くらいであろうといわれている。
 90歳以上は何人くらいいるか。100万人を超えているが、どの辺の都市が100万人にあたいするかというと、広島市、仙台市、北九州市などで、ここに90歳以上が多いというわけではない。都市の大きさとしてはこれらはだいたい100万都市で、90歳以上の人がそのくらいいるということになる。
 新聞の記事だが、百歳以上の人は2万8395人だ。昨年より2841人増加している。36年連続で過去最多を更新していて、男性と女性では圧倒的に女性が多い。女性は2470人多い2万4245人で、全体の85%が女性だ。男性は371人多い4150ということになっている。
 今は個人情報保護法があり長寿番付をやめたが、それでも109歳以上で同意の得られた人が64名いる。これで109歳を超えるところからちょっと難しいかなという話がでてくる。
 100歳以上がどれくらいいるか、統計を取り始めたのが1963年で、この時が153人だった。ところが81年には1000人、さらに98年には1万人。2003年には2万人を超えて来年は3万人に達する見通しだ。人口10万人あたり、100歳以上が何人くらいいるか。全国平均が約22人。都道府県別では沖縄がトップで54人、34年連続1位だ。トップテンは九州、中国、四国の南の方が多い。17年連続最下位は埼玉で10.8人となっている。沖縄と埼玉には5倍も開きがある。埼玉の人が悪いわけではないが、数字上では明らかにこのように数字がでていて、地理的な影響、遺伝的な影響、食事の差などが関係しているといわれている。

 日本人の寿命はどれくらいか、統計的にいうと、厚生労働省によると日本人男性が78.6歳、女性が85.6歳という数字をだしていて、男女とも連続で過去最高を更新している。WHOも日本人は世界で一番健康長寿を達成している国と認定している。世界一長い平均寿命に加えて、世界一低い乳幼児の死亡率。高齢者であっても有病率が非常に低い。

 なぜかを考えたい。一つは食生活だ。魚と野菜を中心とした和食が元来ヘルシーだったことに加えて世界が羨む保険制度がある。世界の国々と比べて比較的高い教育レベルにあって世界一の検診大国だからというのがどうも理由になっているようだ。

 検診に関しては、世界中で検診に注がれる資金の半分が日本で使われているという現状がある。日本人の3大死因はガン、脳卒中、そして心筋梗塞の心臓血管疾患だ。仮にこの3大死因が克服されたとすると、さらに平均寿命は延びて8.74歳、女性で7.94歳だ。先ほどのデータに単純に足し算をすると、女性は平均が94歳にも達するであろうと考えられている。

 ここで「老いる」ということを考えてみたい。老化現象だが、年齢がいけば年齢に従って物理学的に加齢が起こる。
 生物学的に人間は120から125歳くらいまでしか生きられないというのはいくつかの科学的理由がある。フリーラジカル説、活性酸素という言葉を聞いたことがあると思うが、体が段々錆びていくということで、生物学的に年齢を経ていってしまう。
 後、テロメア説というのがある。細胞が分裂していくが、細胞の分裂の程度が繰り返されるうちに、最後は分裂ができなくなる。分裂の繰り返しが最後どこまでいけるだろうという考え方だ。
 その他、段々年齢を経るに従って免疫機能が低下する。外から入ってくる細菌やウイルスに対しての免疫力はやはり生物学的に落ちてくる。遺伝子は紫外線があたると遺伝子に異常をきたす。自然に修復する力が備わっているが修復エラーが起こるとか、あるいはホルモンが落ちてくるとか、そういう色々な原因によって生物学的な加齢があって、その結果物理的に老けてくるわけだ。

第41回講演(2ページへつづく)