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第27回講演(1/4ページ)
ペイオフ解禁
今日のテーマは「ペイオフ解禁。資産運用はどうしたらいいか」ということだが、むしろ4月からのペイオフは資産運用より、如何に資産を減らさないようにするかという問題だ。今はリスクを最小にしようと自分の資産を考えている。ペイオフに対応するには定期預金よりも普通預金、小さな銀行より大きな銀行、郵貯が1千万円になれば振替口座。あるいは銀行に預けるのも心配だから預金を引き出して貸金庫に預ける。銀行に預けずに金庫を買って自分で持っている。そのような状態になっている。笑い話にもならないのが、これがペイオフに対する現在の対応だ。 このままでは困る。多少リスクがあっても預金を移す考えもでてくる。ところが安心して移せるのは一体いつなのか。極めて分かりにくいし危ないのではないかとの懸念が生じる。これは日本の金融の状況が極めて悪いからだ。不良債権を何とかしなければいけないといっておきながら10年。住専、農協の問題から数えても6、7年が経っている。その間景気が良くなった記憶はない。財政出動してみたり構造改革だといってみたりして、改革が行ったり来たりしている。 預金以外としては国債が挙げられる。今、国債は極めて金利が低い。日本人以外は、国債がどうにかなってしまうのではと思っている。外国の格付け会社が日本の国債を格下した。もはや先進国扱いをしていない。では、外国の国債はどうなのか? しかし、これは目先のことだ。いつになったら資産運用がうまくできるようになるかを考えなくてはならない。不良債権処理はどのように解消されていくのか。この点の見極めが長期の資産運用につながるのではないか。 「遅れる不良債権処理と日本経済の再生」を副題に述べていく。結論からいうと、不良債権処理は思ったほどうまくはいかないぞというこが、この3ヶ月ではっきりしてきた。金融庁はこの2年といっているが、2、3年の間には破たんのシナリオがないのだろうか。もしそうなったら破たんのシナリオを回避するにはどうしたらいいのか、政府はどうするのかを考えてみたい。 ペイオフはどのような形で解禁されたのか。 なんでこんな面倒なことになるのか。預金が保証されていれば預金者は安心して預金を銀行に預けるだろう。金利にあまり差がないのであればどんな経営をしていても預金は集まってくる。後は、なるべくいいところに融資をすれば銀行はやっていける。このような行動に銀行は走りがちであった。その結果、経営がうまくいかない銀行が増えてきた。預金保険ではうまくいかなくなってきた。かつては日本債権信用銀行くらいまでは大銀行がより多くのカネを出して救済することをしていた。これはおかしな話で、競争していて優秀な成果が挙がったところには罰があたる。これでは競争ではなくて、業界で一緒になってやっていたことになる。脱落すれば競争相手が少なくなるのだからそのメリットを大きなところが享受するに違いない。だから大きなところは奉加帳に大きな額をかきこみなさいと、競争とはいえない仕組みになっている。 護送船団方式はうまくやっているように見えるが、競争がないことは生産性を高め、効率性を挙げようと努力することがなくなる。非効率でも存在し得るわけで、銀行業界全体の生産性が下がってくる。日本の金融産業は1970年代から生産性の挙がってきた外国の銀行と比べて劣ってきてしまった。金融自由化は1980年ころからいわれていたが、少しも進まなかった。不良債権が溜まりに溜まった。このようなわけで、ペイオフを2年待ったがもう待てない。解禁しようということになった。 時期尚早で、もう少し待とうとの意見もある。しかし実施せざるを得ない。金融庁は4月1日以降は健全な銀行しか残らないようにするという。地方銀行、信用組合、信用金庫は多くの整理が行われた。大手の銀行も統合、合併が行われた。リストラ合併といわれるように、大きくなったのは大手銀行だけである。しかし、合併した途端にどんどん解雇していく。このようなやり方をとっている。 第27回講演(2ページへつづく) |