第17回講演(4/4ページ)
●衛星からの情報は高度な技術者が解析
米国では画像を撮る衛星の命令は中央情報長官DCI、ここからでます。ただし、ただ命令がでるだけではなくて、要求があります。DCIとか、NASAとか、国務省とか、CIAとか、国防総省とか、こういうところからの要求がでてくると、その要求に対してどのような画像を、どのような目的で、どのような精度のものを必要とするかを検討して命令をだします。それで早速衛星に命令が伝えられ、電気的に衛星そのものが撮影に動くわけです。
このシステムで下りてきたデータは受信されて画像処理が行われ、しかもそれが国家画像地図局、これが先程の平和シンポジウムのメンバー国で画像解析をやったり、あるいはその記録を保管したりして必要に応じてその結果を提供します。日本にないのがこの国家画像地図局です。
これは普通の技術ではだめなんです。軍艦の形、飛行機の大きさ、性能とかを頭に充分詰め込んで解析する技術者がいて、その人たちが解析しないと、ただ写真を見ていただけでは何もでてこないんです。 一部だけでもその中から情報をとりだす作業は殆どできないといっていいでしょう。一カ所で200人くらいは必要です。日本で画像処理まではできます。
これからは解析を含めて新しい技術的分野、あるいは総合分野がどんどん必要になってくるであろうと思われます。
軍事ばかりではなく、この衛星は他に何に使えるか解像度が1メートルくらいのを打ち上げようとしていますが環境情報も撮れます。20メートルの解像度で充分なんですがブラジルにおける開発の状況を毎年撮ったりしています。変化がはっきりでています。1973年くらいは緑に覆われていた所が1979年になると道路がはっきりうかんででています。開発道路です。そして伐採です。
1986年には伐採されて裸になった土地がでています。これは世界環境会議でも議論されています。その時の開発は日本のODAがやっています。ODAは日本が開発のための金を貸します。その結果、ダム、道路をつくります。その時の業者は日本の企業なんです。ですから貸した金は全部日本に戻ってきます。日本はODAの金額が多いと世界でいばっていますが、無償で提供する金は殆どないに等しい、これをもうちょっと増やしていくべきです。
それと経済活動を支援するなら人材育成が重要です。物をあげたって、道路をつくっても10年たてばいつかは壊れます。それより人材養成で、その国が独立できるような体制をつくってあげるのがODAでは大切だと思っています。
これから先、宇宙が果たす役割は戦略的な役割だけでなく、情報通信についても同じですし、科学衛星としても宇宙の構造、例えば土星の側を通って輪の中にまた輪があるとかが分かってきました。さらに人間が月に立つこともできました。そういう意味では人間活動はどんどん宇宙に広がっていくだろうと思います。
東海大学に航空宇宙学科がありますが、実はこういうことはあまりやっていません。受験生に聞いてみるとスチュワーデスになりたい、パイロットになりたいと、そういうのばかりがくるのが多かったようです。これからはこういったものを含めて取り扱っていきたい。そういう必要があるだろうと思っています。
この内容は1998年12月15日シャトレー・イン横浜で行われた講演を記録したものです。講演者の話の趣旨はなるべく忠実に伝えるように心掛けていますが、文章化するにあたり、その性質上多少異なる場合もあります。尚、記事の掲載に誤りのある場合は講演内容を優先するものとし、お詫び申し上げます。 |
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