第43回講演
北京五輪を控えて日本と中国の問題点について
北京五輪の準備が順調に進んでいる中の中国、グローバル化する東アジアの中での日本と中国との関係を
(1)安定した取引を示す中国市場の現状
(2)日本の基準等によって製造、輸入されている中国製品の安全性
(3)80年代から生産の相互依存、90年代以降のマーケットの相互依存から、現在金融、資本の相互依存となった日米中関係
(4)戦争がなく安定し、全体的に高度成長している東アジアの現状を踏まえた東アジア諸国との強調と日本の優位性の確保
を通して解説していただいた。
また、ハードの面では東京大学に負けない東海大学において教員が情報収集能力を活かし、情熱をもって学生に情報を与えることによって学生を育てていきたいという葉先生の教育論を語っていただいた。
◆中国国内市場について
本年2月、5月と上海A株が下落した際、「中国バブル経済崩壊」と報じられたが、その後反騰し、現在では当時の2倍を超えている。アメリカと中国は5月中旬に米中戦略貿易会議をワシントンで行い、※適格海外機関投資家の投資枠100億ドルを300億ドルに拡大することで合意した。
昨年、香港証券取引所の株は255.48%上昇し、香港市場に上場した中国銘柄は、IPO(新規公開:Initial Public Offering)から注目されており、主幹事会社であるアメリカのゴールドマンサックス、メリルリンチ、モルガン証券は、中国企業の上場手数料と売買益により多額の利益を上げている。
※適格海外機関投資家: |
適格海外機関投資家として外国証券会社が中国株を売買する際必要なライセンスで、期限は1年間。現在、このライセンスを有する日本の証券会社は6社(大和証券、野村證券、日興コーディアル証券、新光証券、第一生命、三井住友アセットマネージメント)であるが、証券各社は枠を使い切り、売り切れの状態にある。 |
◆日本のビジネススタイル
日本とアメリカの中国に対するビジネススタイルの違いは何か?
アメリカは買い付けが多いのに対し、日本はユニクロからソニー、シャープまで日本ブランドの中国製造品である。これは、日本の法律、デザイン、図面、JIS基準等にもとづいて中国において生産したものであるため、中国が独自に作ったものではない。
例えば伊藤忠では中国で農産物を作っているが、これは山東省で地元農民に研修させ、指導した上で包装まで日本のスタイルにして日本に輸送する。
このようなビジネスを展開するため、現在日本では、大企業だけでなく中小企業でさえ海外、とくに中国などに進出するため海外マーケット、海外生産状況にアンテナを立てている。いちばん日本に必要なものは、激しい競争状態にある東アジアにおける日本の優位をキープすることと、若者の教育、日本の命とも考えられるイノベーションの力を大切にすることだ。
◆北京五輪と中国経済
東京五輪、ソウル五輪、長野五輪を例に挙げ(東京五輪当時五輪関連費用は、日本の年間国家予算の4分の1にあたる1兆円で、日本における1963年のGDPは8.8%、東京五輪が開催された1964年は11.2%だったが、翌年の1965年は5.8%まで落ち込んだ)、「中国は来年五輪後崩壊する」との話があるが、2007年北京五輪関連公共建設費用が中国全土のGDPに対する割合は僅か0.22%で、既に工事は終わっているため五輪後にGDPが落ち込むことはない。
◆グローバル時代への対応
現在はグローバルな時代である。
製品製造では、部品はマレーシア、インドネシア、組み立ては中国と、自分の国だけで造る時代は終わっている。このグローバルな時代への対応が現在、日本の大きな課題である少子高齢化対策のキーポイントとなる。
日本の自動車メーカーの昨年の販売台数は-8%だったが、各社海外生産比率と海外営業利益が大半を占めており、史上最高益を上げた。このシナリオは、脱少子高齢化のシナリオとしてこれから中小企業まで広げていくべきである。日本は技術力、モラル、そして常に危機感もってイノベーションに力を入れ、アジアという大きな国境のないマーケットで日本のシェアはどんどん大きくすることが必要である。
日本、米国、中国は、80年代から生産の相互依存、90年代以降のマーケットの相互依存から、現在金融、資本の相互依存まできている。中国もベトナムも東南アジアも日本も戦争がなく、全部が高度成長しているこの東アジアの現在の状況は、2000年歴史上一度もない初めてのことで、これを活かさなければならない。これには最新のデータ、情報を活かすことが重要である。
(葉先生の要望により録音テープによる聞き書きは出来ませんので、講演の要旨のみをまとめてあります。)
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